令和の時代はサブスクリプションビジネス分水嶺 注目を浴びる一方で撤退や課題も

「所有から利用へ」という言葉とともに急速に注目を集めているサブスクリプションサービス。テレビ番組でも「今注目の〇〇放題」といった特集が組まれ、生活者にも少しずつ認知されるようになってきました。日本においてサブスクリプションは、2018年度にビジネスの世界で注目を集め、メディアでも盛んに取り上げられトレンドになりつつある状況です。

この記事では、直近のニュースやインタビューを通して、日本のサブスクリプションビジネスの現状を確認していきたいと思います。

デジタルコンテンツでは浸透したサブスクリプション

一般にすでに浸透しているサブスクリプションサービスとして、「音楽」「映画やドラマなどの映像」「ソフトウェア・ライセンス」「継続利用型のアプリ」などのデジタルコンテンツが挙げられます。日本レコード協会の発表では、買い切り型となるダウンロードの売上を、ストリーミング(主にサブスクリプション型課金)が上回ったとの発表があり、音楽に関してはサブスクリプション型課金が着実に浸透しているものと見られます。

音楽配信、ストリーミングがダウンロード上回る サブスクリプションが牽引

https://subscription-mag.com/news/record/

また、iPhoneやAndroidなどのスマホアプリについても、非ゲーム領域ではサブスクリプション型課金のアプリが売上上位を占める調査結果も。

世界のアプリ市場サブスクが牽引、非ゲーム上位5位がサブスクアプリに

https://subscription-mag.com/news/appannie/

上位アプリのうち、1位が『ネットフリックス』、2位がマッチングアプリの『Tinder』、3位が動画アプリの『TencentVideo』となっています。ここでも動画コンテンツが優位ですが、マッチングアプリなどの月額定額課金のサービスも大きく伸びています。

今後はモノやサービスのサブスクリプションへ

ここ一年でサブスクリプション型サービスとして注目を集めるのが、モノやサービスのサブスクです。編集部では、これまで主にモノやサービスのサブスク企業にフォーカスをして、インタビューなどを行ってきました。

モノのサブスクとしては、古くから単品リピート通販と呼ばれる健康食品(サプリメント)や、化粧品の定期販売、食品の頒布会などが存在していましたが、今サブスクリプションとして注目されているのはこうした定期販売型通販ではなく、家具や家電、洋服、美容室、住居、観光などのモノやサービスの定額利用です。

生活者から見れば、購入の際にかかる初期費用の軽減や、使わなくなった後の処分などが不要になるメリットがあります。一方の事業者のメリットとしては、継続的に顧客との接点を持てる、顧客数の増加に伴って安定した継続収益が見込め、事業計画が立てやすいといったメリットが挙げられます。

日本のサブスクリプションでも既に撤退サービスも

一方で、サブスクリプションビジネスをいち早く取り入れながらも撤退したサービスも散見されるようになりました。以前の記事で取り上げた『Tokyo Shave Club(トーキョーシェーブクラブ)』も、その一例です。『トーキョーシェーブクラブ』は、サブスクリプションが日本で注目され始めた昨年の5月にサービスを終了しています。

サブスクリプションの成功の秘訣はオンブ!?失敗事例にも照らし合わせてみる

https://subscription-mag.com/knowledge/subscription-onb/

同サービスは、アメリカでブレイクした『ダラーシェイブクラブ』のモデルを日本に持ち込んだとして注目を集めましたが、サービスが軌道に乗る前に撤退となってしまった模様です。売り場が近くにある日本と、アメリカの購買習慣の違いや、カミソリを使う頻度や箇所の違いなどの事情もありそうです。

また、早い時期からサブスクリプション型を取り入れたファッションの業界でも淘汰が進んでいます。直近の話題ではZOZOのおまかせ定期便がサービス終了となりました。

ZOZO、ファッションサブスクの『おまかせ定期便』から撤退

https://subscription-mag.com/news/zozo-omakase/

2018年2月にスタートした同サービスは、1年で終了になりました。サービスの概要としては、ZOZOがセレクトした服や靴などが毎月送られてきて、気に入った場合には購入、気に入らない場合には7日以内に返送。服を借りるというよりも、コーディネートを考えずに毎月送られてくる服を試しに着ることができる部分がユーザーメリットでしたが、反響はあまり芳しくなかったようです。

スーツのサブスクリプションとして注目を集めたAOKIの『suitsbox』も半年で終了となりました。クラウドファンディングで目標額を達成し、順調に見えた一方で、事業開始前の想定と実際に申し込んだユーザーのギャップ、在庫と需要のギャップ、既存店舗とのカニバリなどの事情があったとも言われています。

スーツのサブスクリプション「suitsbox」が開始半年で終了へ

https://subscription-mag.com/news/suitsbox/

黒字化事業出現で明るい兆しも

一方で、会員数を順調に伸ばし、既存店舗とのカニバリを起こさずに新たな客層を取り込んだサービスとして『メチャカリ』が挙げられます。

[インタビュー]黒字化を果たしたファッションのサブスク『メチャカリ』店舗では獲得できなかったユーザー層を取り込むメリット

https://subscription-mag.com/interview/mechakari/

会員数12,000人を突破し、事業が黒字化した、と発表した『メチャカリ』。黒字化とはいえテレビCMなどの宣伝広告費を除いての黒字とのことですが、現在のところ唯一と言ってよい収益化したサービスとなっています。メーカーが常に抱える、既存の店舗などの流通網との競合についても、実際にサービスを開始してみたら店舗に来ない顧客層が申し込んでくれた、と話しているように、サブスクリプションサービスを開始したことで、新たな顧客の開拓につなげることに成功しています。

AOKIがサブスクリプションから撤退する一方で、レナウンが同じスーツのサブスクリプション『着ルダケ』事業で、目標を超える申込みを獲得している、と発表しています。

[イベントレポート]レナウン、スーツのサブスク『着ルダケ』会員は順調に拡大

https://subscription-mag.com/interview/kirudake/

編集部では、レナウンに対して個別の取材を行いました。(個別インタビュー記事は後日公開)同社も、従来は百貨店という販路での販売を行ってきましたが、サブスクリプション形式でユーザーにダイレクトにサービス提供する形態に踏み切りました。利用者は40代以上が多いとのことで、AOKIのサブスクリプションサービスと同様の年齢層ではあるものの、「想定通り」としています。元々、同社のスーツは高価格帯のため、関心を寄せるのはスーツを気にかける忙しい高所得ビジネスマン。こうしたユーザーが、自分でスーツを選ぶのが面倒、クリーニングなどが面倒、クローゼットがスーツでいっぱいになってしまっている、などの不満を解消するために、『着ルダケ』を利用しています。現時点ではユーザーの満足度も高く、継続率も高い状態です。

空きリソースを活用してユーザーに利便性を提供するサブスクリプションサービス

サブスクリプションをする上で、空いたリソースを活用してビジネスを進めている事例もあります。美容室のサブスクリプションとして有名になった『MEZON(メゾン)』は、シャンプー・ブローというサブメニューに特化して通い放題を提供しています。

[インタビュー]美容室の価格競争体質を打破するサブスクリプション「MEZON」、9割を超す継続率の秘密

https://subscription-mag.com/interview/mezon-interview/

『MEZON』のユーザーは、家事や子育てと両立して忙しく働く女性がメイン。平日の昼間、仕事の合間や会食の前など、比較的空いている時間帯の利用が多いとしています。一方の美容室はこうした空き時間に顧客が来店してくれることがメリットにつながっています。ビジネスモデルとしては、『MEZON』はユーザーから毎月定額を支払い、美容室には利用に応じた支払いをしています。従来、クーポン媒体といった割引券で新規顧客を開拓していた美容室にとって、空き時間に来店があり、しかも売上につながるとなれば大きなメリットです。毎日利用するヘビーユーザーが増加すると『MEZON』の収益が悪化してしまうリスクはありますが、加盟する美容室は急速に増加しています。

家具の分野では様々なサブスクリプションサービスが誕生していますが、『airRoom』の場合、家具メーカーの遊休資産を使ってサブスクリプションビジネスを開始しています。

[インタビュー]若き起業家が挑戦する家具のサブスク『airRoom』サブスクの先にあるシェアリングエコノミーへの挑戦

https://subscription-mag.com/interview/airroom-interview/

家具のサブスクリプションの場合、仕入れに大きな負担がかかりますが、『airRoom』では遊休資産をリースの形で契約し、毎月支払いすることで一時的なキャッシュアウトを回避しています。ユーザーからのサブスクリプション収益を支払いに充当するため、短期間での解約ユーザーが増加するとリスクとなる可能性はありますが、参入にあたっての大きな壁となる初期投資を、極力少なくする工夫がされています。

こうした、空いたリソースを活用したビジネスは、シェアリングエコノミーの登場とともに出現しました。昨今のサブスクリプションビジネスの浸透も、背景としてはモノを持たないシェアリングエコノミーの流れがあります。

各社共通の課題は「サブスクリプション」のライフスタイルへの浸透

過去のインタビューや、イベントでの登壇者の発言に共通して見られる今後の課題としては、サービスの認知度がまだまだ低い、などが挙げられていました。

サブスクサービス、利用経験は35%。サブスクを知らない人は32%(マクロミル調べ)

https://subscription-mag.com/knowledge/subscription-research/

マクロミルによる調査では、サブスクリプションを利用したことがある人は、動画配信で24%、音楽配信などのデジタルコンテンツが続きます。認知率でようやく、洋服が7%、飲食店6%といった少数が認知している状態です。いずれのサービスも知らない人が32%にものぼりました。

モノが定額で利用できる、サービスが定額で使い放題になる、といったサービスが存在していることをまずは知ってもらう必要があります。

そういう意味では、現時点では日本においてはサブスクリプションサービスはまだ黎明期。今後、元号が令和に変わり、サブスクリプションが情報感度の高いアーリーアダプター層から、広く一般に浸透していくのとともに、サブスクリプションビジネスも成長していくと考えられます。

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杉山拓也
大手SIerを経て、ベンチャー企業にて複数のB2Bメディアを立ち上げる。 その後アプリマーケティング会社を立ち上げ、500以上のアプリマーケティングを支援。サブスクリプション型のビジネスを通して継続的にユーザーとコミュニケーションする重要性を体感する。 サブスクリプションマガジン編集長。