[インタビュー]6割が6ヶ月プランを選ぶファッションのサブスク『EDIST.CLOSET』運営でわかった小さな失敗とは

安定した売上・利益を得られるモデルを模索する時期から事業譲渡まで

徐々に浸透しつつあるファッションレンタル。そんな中でも早い段階でサービスをスタートさせた『EDIST.CLOSET(エディストクローゼット)』。果たしてどのようなユーザーが利用し、どのくらいの期間継続して契約しているのでしょうか。

同サービスを運営する株式会社EDIST 代表取締役 満薗かおり様にお話を伺ってきました。
インタビューでは立ち上げ期の失敗や試行錯誤、サブスクリプション型ビジネスのメリットやデメリットについてもお聞きしています。

株式会社EDIST 代表取締役 満薗かおり様

株式会社EDIST 代表取締役 満薗かおり様

 

ーEDIST.CLOSETを始めた背景は

サービスを開始した当初はアプリやブラウザゲームの会社が母体となって開始しました。
ゲーム事業は利益が大きいのですが、当たり外れも大きい事業です。
当時、ゲーム事業以外に非ゲーム事業を立ち上げようという話がありました。
非ゲームで事業をするからには、安定した売上・利益を得られるモデルにしたい、ということで、企画に入りました。

当初はファッションメディアをやろう、という企画で進んでいたんです。
ゲームでは男性向けと女性向けがあったのですが、女性向けゲームの方が長く遊んでもらえていたことから、安定した収益になっていました。
そこで、女性をターゲットにしたサービスを立ち上げて、安定的な収益を得ようと考えたんです。

こうした背景から、SNSのファッション系メディアを開発しようとしていたのですが、既に競合が多数存在していたことや、収益化といっても広告収益しか見込めないことから、ビジネス的な広がりがない、という結論に達しました。
ただ、メディアを開始しようとして集めた「どんなサービスがあったらいいですか?」といったインタビューの中に、「日常服のレンタルサービスがあったらいいな」という声があったんです。

メディアの取材で対象にしたのが30代の女性だったんですが、「だんだん、どこで服を買ったらいいかわからなくなる」「仕事に出かけるときの服に困っている」「子どももできて自分にあまりお金をかけられない」という声があって、それに対する“あったらいいな”というサービスがいくつか出てきました。
その中のひとつがファッションをレンタルするEDISTのサービスでした。

そこからマーケットの状況などを見て、チャンスがありそうだ、と考えてEDIST.CLOSETをはじめました。

サービス開始にあたって、サブスクリプションという形式でなくてもよかったのですが、ヒアリングの内容と、小さくてもいいので安定した事業を作り上げるという会社のミッションを照らし合わせた結果、定額の会員制という形態をとることにしました。
ちょうどユーザーのニーズにも、ビジネスの伸びしろとしても、あるサービスでした。

ー3年前というと、まだファッションのサブスクがほぼ見られない時期でしたね。

サービス開始当初は、競合といえばairCloset(エアークローゼット)さんと、その他数えるほどしかサービスが無かったです。
エアークローゼットさんが先行してサービスを提供していて、無料会員が爆発的に集まっていたのは見ていましたし、一方で大手さんが全く手をつけていなかったので、新規参入できるチャンスだと思いました。

国内はサブスクリプションサービスはまだ珍しかったのですが、海外などでは事例も多数あったこともあり、ビジネスとしても成り立つということは見えてきました。

ーもともと立ち上げた会社から事業譲渡されていますが、どういった経緯なのでしょうか

立ち上げ時の会社はゲームを作る会社だったのですが、この3年くらいで海外からの進出などがあってゲーム業界は大きな変化が起こりました。
こうした中で、会社の方針として本業のゲーム事業に特化するという決定がありました。
そこで、事業継続のための提携先や買収先を探しているなかで、ちょうど新規事業に投資したいという会社があり、2019年12月1日に事業譲渡となりました。

服のサブスクの認知が無い中で、“レンタル”と言うのをやめた

ーサービス開始にあたってテストのようなプロセスを踏んだのでしょうか

メディアを作っているときのユーザーインタビューなどもあったので、テストは特に行っていません。
最初は小さく始めてみて、ダメだったらすぐ撤退できるような規模で開始をしました。
それがテストと言えばテストかも知れません。

テストをするにしても、ファッションのサブスクリプションの場合、洋服を仕入れないといけないので、小規模でスタートさせて1年で目標値までいかなかったら撤退というやり方を考えていました。

ーサービス開始当初のユーザーの反響はいかがでしたか?

反響はあったのですが、当時は今のようにファッションのサブスクリプションの認知度は全くなかったので、興味を示しはするものの、理解をする前に帰っていってしまうという方が多かったです。
なので当時は“ファッションレンタル”という言葉を使うのは一旦やめて、気に入った服を見てもらい、“実はこれ、レンタルできるんです”という見せ方をしていました。

ユーザーさんにファッションレンタルという仕組みの理解をしてもらう、というハードルを超えるのが難しかった時代です。
「月額定額の会員制でなんで服を借りるの?」といった感じで、ユーザーさんはサブスクリプションのサービス体系など思いつきもしない時代でした。

コーディネートを提案し続けることでサブスクリプションの継続率を向上させる

ー料金プランの設定は当初から12ヶ月、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月の設定でしたか?

サービス開始当初は1ヶ月と3ヶ月でスタートさせました。
2017年の秋からプランを増やし、6ヶ月と12ヶ月プランを追加しました。

長くご契約頂いている方には価格的なメリットを提供していきたいという考えから、長期の契約プランを追加しました。
EDISTのユーザーさんは、ご契約いただいてすぐに離脱してしまうか、長期間契約し続けてくださるかに分かれています。
長く続けていただいているユーザーさんは、3ヶ月プランを延々と更新し続けることになります。
そうした更新の手間を省くという意味合いが強いです。

ユーザーの6割以上が6ヶ月プランを選択しているという事実

ーEDIST.CLOSETの継続率はどのくらいでしょうか

細かな数字は公開していないのですが、ユーザーの6割以上が6ヶ月プランでご契約いただいています。
最初の契約は3ヶ月プランが多いのですが、継続していくうちに6ヶ月プランに乗り換えるユーザーさんが多いです。

先程のプラン設計でもお話したように、継続してくださるユーザーさんはかなり長くサービスを継続契約してくださるので、長期プランの需要が多いんです。

ー長期契約するということは、ファッションのサブスクサービスは一度生活に入り込んでしまうと便利ということなのでしょうか

EDIST.CLOSETの他のファッションレンタルサービスと違う点が、コーディネートセットをしてレンタルしているということです。
単品で借りられることも便利なのですが、4点1セットでレンタルをしています。

ウェブサイトでは、コーディネートされた服が延々と提案されるようになっています。
「こういう着回しができますよ」ということをお伝えしています。
ユーザーさんがお持ちのベーシックなアイテムとの組み合わせを見ていただくことで、着回しできることを訴求しています。
それを見て、コーディネートを選んでいただけます。

次の月に何を借りようかな?ということを楽しみに見ていただけるようなインターフェースになっているので、毎月楽しみにしていただけていると思っています。

ユーザーとの接点は、ブログとインスタグラムで行っています。
オフィシャルエディストというユーザーさんに“今日のコーディネート”の写真を撮っていただいて、公式のアカウントで発信をしています。

運営の中で小さな失敗を繰り返しながらサービスを常に改善

ーEDIST.CLOSETをやってみてわかったことはありますか?

これまで運営してきて、いくつか失敗談はありますが、その中の1つとしてユーザー層が想定と違ったということがありました。
当初、こういったサービスを使うのは相当おしゃれな人だと考えていました。
いわゆるファッショニスタという人がいて、インフルエンサーだったりするんですが、インフルエンサーさんはご自分で服を買ってしまうんです。

そのインフルエンサーさんと仲がよい、インフルエンサーになりたい人たちがターゲットだと考えていたんです。
そのターゲットに向けてマーケティングをしていたのですが、全然人が集まらなかったんです。
「何でだろう?」と考えていました。

服を着こなし、流行を作り出す人たちがいて、それを取り入れる人たちがいる。
彼女たちは自分に自信を持っているんです。
一方で、多くの人が「いいな」と思って雑誌やウェブを見ているものの、いざそれを買うとなると、自分に似合うかどうか分からない。
興味はあるものの、誰かに後押ししてもらわないと購入に踏み込めないという層がいらっしゃるんです。
そういったファッション初級~中級者の方がサービスを使ってくれる、ということがわかったのが、サービス開始から1年の学びでした。

最初は、おしゃれな人向けのコーディネートを提案していたんですが、それだとモード過ぎて使いこなせなかったりするんです。
なので、それをブレイクダウンして、普段の仕事に来ていける、人の目はそこまで気にならないけど「なんとなく、それいいね」というコーディネートに切り替えました。

ーサブスクリプションモデルをとったことで気づいたことはありますか?

サブスクリプションは実はユーザーさんとってはそこまで便利というわけではないと思います。
毎月毎月、継続してお金を支払わないといけないじゃないですか。

生活って常に変化していると思うんです。
その中で、サブスクリプションという月額定額制は始めにくいし、やめにくいという側面があると思います。

たとえば、今まで何事もなく生活する中でサブスクリプション契約をしていたとしても、急に入院することになったりしたら、毎月の支払いが急激に重くなります。
都度買い切りのものであれば、そういった心配をすることなく、お金に余裕があるときに買えばいいですよね。

ーサブスクリプションモデルは契約までのハードルが高い、ということでしょうか

はい、ただ私達のサービスは例えばヨガの教室だったり、フィットネスジムと同じくらいの価格設定をしているので、今のターゲットユーザーさんにとってはさほどハードルは高くないようです。
女性が、自分の生活の中で何か1つ取り入れるサービスとしては、ジムやヨガ、ネイルなどが多いと思います。
その価格帯であれば、生活に取り入れやすいと考えて価格設計をしました。

解約の理由は「もっと他の洋服を着てみたい」継続率向上のためのアクションは商品量の確保

ー新規ユーザーの獲得はどのようにしていましたか?

今後は広告についてもアクセルを踏んでいく予定ではあるのですが、EDIST.CLOSETについてはほとんど広告をやっていないです。
SNSでインフルエンサーマーケティングはしていました。
当時はインフルエンサーマーケティングが結構効いたので、それをやりきりました。

ブログ内で紹介してもらったり、インスタグラムの中でも私達のサービスと親和性の高い洋服を紹介している方に、サービスを紹介してもらったりといった活動です。

ー現在の会員数は?

無料会員は18,000人、有料会員は3,000人になっています。

サブスクリプションはユーザーの敷居は高いが、一度契約すると継続的にユーザーとお付き合いできるという

ー一度契約すると解約しにくい、とのことですが、解約するユーザーの理由は?

一番多いのは、もっと他の洋服を着てみたい、であったり、飽きてしまったという理由です。そこは改善の余地があると考えています。

コーディネートの量もそうなんですが、商品の量が重要だと考えています。
これまではコーディネートの提案型でやってきたんですが、洋服の量も今後増やしていかないといけないと考えています。

クロスセルやアップセルを設計できるのもサブスクリプションのメリット

ーモノのサブスクは仕入れが発生しますが、黒字化に向けた取り組みはどういったことをされているんでしょうか

洋服の場合、半年以上前に生産をしていますので、読みが重要です。
1年後の会員数の状況などを考慮しながら生産はしていますが、難しい部分です。

過去には洋服の在庫が足りない、ということもありました。
会員登録が想定を上回ってしまい、生産枚数を超えてしまったので、新規会員登録を止めたという出来事がありました。

あらかじめ作っておかねばならない、モノのサブスクは難易度が高いと思います。

一方で、サブスクリプションモデルの場合、会員数がはっきりしている側面もあります。
PRの打ち方や解約率もわかっていれば、翌月以降の会員数も分かりやすいのが特徴です。
あとは、顧客あたりの単価を上げていけばビジネスとしては成り立ちます。

私達のサービスだと、コーディネートを提案しているので、伸びしろはあると考えています。
今はトップスやボトムスのコーディネートを紹介していますが、トータルコーディネートではないんです。
というのも、女性がコーディネートを完成させて外出するためには、まず下着から入らないといけない。
アクセサリーであったり、カバンであったり、帽子や靴なども必要になってきます。
本来はそうしたトータルコーディネートをしていく必要があると考えています。

カバンや靴がないと、コーディネートが完成しないので。
単に単価を上げるという話ではなく、トータルコーディネートを完成させるような提案に広げていく事ができると思います。
そういう意味でサブスクモデルは非常にいいと考えています。
いわゆるクロスセルやアップセルのご提案です。

ファッションのサブスク『EDIST.CLOSET』

ファンになって頂いたユーザーさんに、押し売りではなく、提案という形でトータルコーディネートを見せていく。
マネキン買いではないですが、これだったらまとめて借りてもいいな、と思っていただけることはできると思います。

そこまでご提案できるというのは、やっぱりサブスクリプションモデルで継続的にユーザーさんとお付き合いしていないとできないことです。
フロー型の買い切りモデルだと、お客様の声や要望が聞けても断片的になってしまいます。
会員型だからこそ、どういうご提案をすれば、ユーザーさんが喜んでもらえるのかが分かるというメリットは大きいです。

サブスクリプションビジネスで値引きは本質ではない

ーユーザーさんとのコミュニケーションはどういった方法でとられていますか?

今はフィッティングイベントなどを定期的にやっています。
ウェブだけでなく、実際に着ることのできる試着会です。
試着会とワークショップを組み合わせたイベントなども行っています。

あとは、お客様からの着こなしのための相談窓口を作っていたりします。

ー継続率を上げるための取り組みはされていますか?

継続率を上げるためには、商品のバリエーションを増やしていったり、コーディネートの提案を深くしていくという取り組みがそれにあたります。

値引きをするなどの対策もあるとは思うのですが、本質的ではないと考えています。
結果的に長く使っていただけるユーザーさんに価格メリットがあるような取り組みはしていますが、それがユーザーさんの求める価値ではないと思うので。
単に価格勝負になってしまうと、安いところに流れて終わってしまうと思うんです。

まずは、商品とコーディネートを充実させることです。

ユーザーにとってのサブスクリプションに対する不満や不便があれば、売り切りも取り入れていく

ー今後さらにブラッシュアップしていきたい部分は?

サブスクリプションモデルがゆえに、ということもあるんですが、入会後、自分が何月まで契約が続くのかがわかりづらいという課題があります。
私もジムの契約などでこうしたことはあるんですが、何月までの契約で、今解約したらどうなるのか?ということが見えづらいんです。

3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月とプランがあるなかで、問い合わせとして多いのは、「解約したいんですが、どのタイミングで解約したらいいでしょう?」というのが多いです。
これは、どんなに文章を書いてもなかなか難しくて、視覚的・感覚的に分かるようにしないと伝わらないと考えています。
そうしないと、ユーザーさんに「1日でも過ぎたら解約できないのではないか」といった不安を与えてしまうことにつながってしまいます。

デジタルコンテンツなどでは夜23時59分を過ぎると自動的に継続されたりといったことがあるじゃないですか。
私達のサービスはそうではないので、それをうまく伝えることが出来ればと思っています。

ーEDIST.CLOSETの今後の展開は

先程触れたのですが、トータルコーディネートを追求していきたいと考えています。
サブスクリプションにこだわっているわけではなく、最終的にユーザーさんのコーディネートが完成すればいいと思っているんです。
「こんなコーディネートは自分では組めなかったけど、助けてもらえたら組めました」というユーザーさんを増やしていきたいと思っています。

そのために、洋服の点数を増やしたり、コーディネートのバリエーションを増やしていきます。
また、洋服のレンタルだけではなく、関連するアイテムの販売なども行っていきたいと考えています。

ユーザーさんの中でサブスクリプションに対する不安や不便があるようであれば、販売という手法も組み合わせて使えるようにしていきます。

ーありがとうございました

 

ファッションのサブスクリプション『EDIST.CLOSET』
ファッションのサブスク『EDIST.CLOSET』実にユーザーの6割が6ヶ月プランを選んでいるというファッションのサブスクリプションサービス。着実にユーザーを増やしつつ、商品ラインナップも拡大。今後はさらにトータルコーディネートにまで進出する。

『EDIST.CLOSET』https://closet.edist.jp/

 

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杉山拓也
大手SIerを経て、ベンチャー企業にて複数のB2Bメディアを立ち上げる。 その後アプリマーケティング会社を立ち上げ、500以上のアプリマーケティングを支援。サブスクリプション型のビジネスを通して継続的にユーザーとコミュニケーションする重要性を体感する。 サブスクリプションマガジン編集長。