[インタビュー]黒字化を果たしたファッションのサブスク『メチャカリ』店舗では獲得できなかったユーザー層を取り込むメリット

有料会員数12,000人突破を発表した、ファッションのサブスクリプション『メチャカリ』。

今回は『メチャカリ』事業を手がける株式会社ストライプインターナショナル メチャカリ部 部長 澤田昌紀氏にインタビューさせていただきました。

『メチャカリ』は3年を超える継続ユーザーも増えている、ということで利用者の生活にかなり浸透しているサービスでした。
サブスクならではの課題や、今後の展開も含めてお聞きしました。

株式会社ストライプインターナショナル メチャカリ部 部長 澤田昌紀氏

株式会社ストライプインターナショナル メチャカリ部 部長 澤田昌紀氏

 

業界外のITベンチャーのディスラプトが進む中、業界内から変えていく

ーメチャカリはどんな背景で生まれたサービスなのでしょうか

事業構想自体は2014年末くらいです。

弊社は2016年、事業領域をライフスタイル&テクノロジーと定義しました。
ただのアパレルではなくて、アパレルから領域を拡げ、テクノロジーを組み合わせて新しいことをやっていこうと動き出した時期でした。

当時UBERやAirbnbなどが話題になっている時期でした。
業界外のITベンチャーが進出してきて、新しいモデルで業界の構造を変えるということがありました。
きっとアパレル業界でもディスラプトというのがITベンチャーによってもたらされるんであろうという危惧があり、であれば破壊されるのを待つのではなく、自ら新たなサービスをやろうという空気がありました。
調査をかけるなかで、海外にLe Toteという服のレンタルサービスを見つけました。
それを参考に、当社の商品を新品でレンタルして、返ってきたものをユーズドで販売する、というビジネスモデルが出来るんじゃないかと考えました。
それを弊社代表の石川に提案したところ、面白い、と答えが返ってきたので、3ヶ月のテストをして、事業をリリースしました。

もう1つ、ティーンエイジャーや大学生に5,800円という価格でたくさんの服を楽しんで欲しい。
そういった人たちがいずれ、お店で服を買っていくようになって欲しいという意味をもってメチャカリをリリースしました。

ーサービス当初からサブスクリプションというコンセプトはあったのでしょうか

そうですね。
サービス開始当初から今まで、サブスクリプションとレンタルを組み合わせたような、借り放題というコンセプトは変えずに提供していますね。

ーサービス開始前のテストはどういったものでしたか?

2015年の4月から6月にかけて、プロトタイプのサイトを立ち上げて、100名のお客様に使っていただきました。
この結果をもって、値段設定などを最終確定させました。

テストは申込みに対する抽選で行いました。
お客様を数万人セグメントした上で、メチャカリのテストを告知して申し込んでくださった方を対象としています。

テストの時点では5,000円という価格で設定していましたが、テストの結果、現在では5,800円の価格設定にしました。

ー新品のみのレンタルにした意図とは

ターゲット層の声を聞くと、中古の服は抵抗があるという声が多くありました。ファッションのサブスクリプション自体が新しいサービスですし、お客様に安心してご利用いただくために新品にしました。
また、新品の場合は新作をそのシーズンにご利用いただけるというメリットもあります。
中古の服を貸し出したとすると、人によって匂いやシミなどの感じ方が違うと思います。
貸し出した服に不備があると、お客様の満足度は確実に下がります。品質管理の体制を組もうとすると莫大な費用がかかることもあり、新品に限定しました。

普通サブスクリプションの場合、使いまわした方が儲かるでしょ、と思うかも知れませんがそうでもないんですよ。
そのうちロスも出るし、全部が全部再生出来るわけではないし、再生コストもかかる。

あとは、レンタルした服は買い取れるので、2回も3回も貸し出された服はそもそも買われなかった服という事になります。

キャズムはまだ超えていない、さらに市場を拡大する必要がある

ー1ヶ月無料体験を設定した背景は?

無料体験は、2016年の3月から設定しています。
世の中に誰も体験したことがないサービスなので、まずは広く使って欲しいという意図で設定しました。
もう1つは、ユーザー拡大のためでもあります。

そうしないと、このマーケットは無くなってしまうと思うんですよ。
まだキャズムは超えていないと思っているので。

ーメチャカリの認知度が37.2%と競合他社と比べて高いですね

比較してしまうと高いのですが、まだまだだと考えています。

37.2%というのは助成想起での調査結果なんですが、純粋想起だと10%くらいしかないんですよね。
純粋想起で30%くらいいくと「ユーザーに浸透してきた」と思えます。

そのくらいファッションのレンタルというものがまだ浸透していないんです。

キャズムはまだ超えていない、と語る澤田氏

ーマクロミルの調査結果を記事にしたんですが、サブスクサービスの認知度の上位はほとんどデジタルコンテンツ系でした

記事:「サブスクサービス、利用経験は35%。サブスクを知らない人は32%(マクロミル調べ)」
https://subscription-mag.com/knowledge/subscription-research/

私もその記事を拝見したんですが、ファッションのサブスクは7%くらいしか認知がなくて、まだまだ認知率が低いと思っています。

音楽や動画は認知率が50%を超えてるんですよね。
私の肌感ともあっていて、ファッションのサブスクはまだまだこれからだと思っています。

3ヶ月継続して使ったユーザーは長く使う傾向がある

ー利用するユーザー層はどういった方でしょうか

当初は既存のお店に来ているお客様と同じようなユーザー層を想定していました。
店舗とカニバリを起こすかなと考えてもいたんですが、実際には当社の顧客層とは違った方が使っていらっしゃいます。

服が必要な層、例えば20代後半の都心のワンルームマンションに住んでいる会社員で、バリバリ働いている、ファストファッションを着て半年くらいで次の服を買っている、といった方が利用しています。
クローゼットが、要らなくなった去年の服でパンパンになっているので、メチャカリをみつけて「これは効率的だ」ということで使っていただいているケースもあります。

あとは、30代前半のママさんで、ショッピングセンターなどに行くんですが自分の服を選んでいる暇はないし、子どもにお金がかかるのであまり自分の服にはお金をかけたくないという方。
たまにはママ会もあったり、ご両親に挨拶に行くときもある。
そういったときに5,800円で手軽に、新品の洋服がクリーニングなしで借りられるというのが便利なようです。

服が第一というよりは、仕事や家事、育児などが忙しく、ファッションにはあまり時間を避けないけど、おしゃれには気を付けたいという方に使って頂いているようです。

結果的に、店舗とのユーザー層のカニバリは30%程度で、70%は新しいユーザーでした。
それは会社としてすごくポジティブに捉えています。

ーユーザーはメチャカリをどのくらいの期間継続して使うのでしょうか

継続率は公開していないのですが、3ヶ月継続すると、その先の継続率が高いということは分かっています。
長い方は事業開始から3年数ヶ月使っている状況です。
事業を続ければ続けるほど、継続しているな、という感じです。

なので平均値をとると、どんどん継続期間がのびている状況です。
サブスクリプションの場合、契約が継続していかないと会員数は増えていかないですから。

ーユーザーに継続してもらうための取り組みは

その人が借りたいと思う商品があるかどうかに尽きるかなと思います。
デジタルコンテンツでもそうですが、見たいコンテンツがあるか、聞きたい曲があるか、が重要だと思います。
ファッションのサブスクリプションの場合、魅力的な洋服があるかが、継続率を左右しています。

今、1万種類以上の服を扱っています。
その供給をし続けるということ、その中からユーザーが自分が欲しいアイテムに出会えることがポイントになってくると思います。
まず、商品のバリエーションを増やしたり、今あるものをキープしたりして総量を増やしています。
また、昨年、パーソナライズチャットボットをリリースし、その人ごとに適切な商品を提案する仕組みを導入しました。

メチャカリでもパーソナライズをしていくんですが、ネットフリックスでもユーザーによってレコメンドが変わっていますよね。

そこをさらに強化していけば、無理に商品を増やさなくても満足度は上がると思います。
今後はそういう方向に向かっています。

ーチャットボットで得られたユーザーデータをレコメンドに活用するのでしょうか

今、チャットボットでデータを蓄積していて、今後それを最適化して活用していく予定です。
今のところは、いくつかのシナリオが組まれていて、適した商品をレコメンドしていますが、今後は集まったデータを活用していきます。

ーメチャカリを解約するユーザーの動機は?

アパレルなので季節性があるのは事実ですね。
たとえば真夏よりも、真冬の方がユーザーのメリットがある。

当社の場合、靴以外のオールアイテムを扱っています。
単価も当然違ってきます。
冬用のコートであれば1万円以上したり。
なので、真冬だと1万円のコートを3点借りることが出来ます。
Tシャツだと2~3,000円で済んでしまうので、真夏はお休みしようかな、というユーザーさんがいらっしゃるのは事実です。

ただ、一度休眠したユーザーさんも、また冬になると再開される事が多いです。

未来のサブスク拡大を見越したテレビCM戦略

ー欅坂46を起用したテレビCMの効果はどうでしたか?

国民的アイドルなので、朝の情報番組に出たりとか、マスコミにかなり取り上げられました。
なので、反響はかなりありました。

日本で多分初めてテレビCMで“サブスク”と訴求していました。
2017年の冬にはもう“サブスク”と言い始めていましたね。

2017年というと、サブスクリプションという言葉も一般に認知されていなければ、サブスクという略語ももっと認知されていない時代でした。
代表の石川が「これからサブスクリプションの波が来る」ということで、意思決定しました。

普通に考えたら、アプリの使い方を宣伝したりというテレビCMが一般的だと思いますが、我々はインパクトを重視しました。
そうやって、認知率を上げていくという方法をとっています。

CMでは「ファッションもサブスクへ」というメッセージを入れているんですが、ファッションのサブスクリプションならメチャカリ、というイメージを浸透させていきたいというのが狙いです。

広告費を除けば黒字転換、しかし市場拡大への投資は続ける

ー事業としてメチャカリを始めたメリットはどんな部分でしたか?

店舗とメチャカリであまり顧客が競合せず、新たな顧客と売上・収益をもたらしたという部分が純粋にプラスになっています。
広告宣伝費を除けば、今年度黒字転換しているので、収益性もあります。

今は認知を拡大するフェーズなので、広告宣伝費をすごく使っているので全体で見ればまだ赤字なんですが。
我々としては、ファッションサブスクリプションを広めていきたい、マーケットを拡大していきたい、そして拡大したときには我々が一番でいたい。
そういった思いがあるので、先行投資で広告宣伝を積極的に行っています。

あとはサブスクなので、一回出来た売上・収益はなかなか減らないですよね。
会社としても、投資がしやすい、事業計画も組みやすい、安定性のある事業でもあります。
加えて、この事業をやっていなければとれなかったお客様が獲得出来ている。
当然、とれていなかった売上、これがメチャカリを通してとれてきているという効果もあります。

ー顧客視点からメチャカリがあってよかった点はどんなところでしょうか

ユーザーが12,000人を超えているということは、それだけメリットを感じているユーザーがいるということだと思います。
また、ユーザーが3年もお金を払い続けて使っている、ということは生活の一部に入り込んでいると思います。

先程言った、ペルソナ像のような使い方がなければ、このサービスは広がっていないんでしょうか。
月額5,800円と分かりやすくて、家計の見通しも立てやすいですよね。

来週実家に帰るから、綺麗めのYECCA VECCAを借りよう、とか。
でも普段はそういう綺麗な洋服ではなくて、もっとカジュアルな洋服がいい。
そういったお客様の生活にフィットしているから、12,000人もユーザーが使っていたり、3年も継続して使ってくれたりしているんだと思うんです。

サブスクは安定した収益はあるが、自ら市場を拡大する必要がある

ーメチャカリ運営で今後さらにブラッシュアップしていきたい点は

メチャカリは、基本的に自分で選ぶサービスなので、そこが良い点でもあるんですが、自分で選ぶのを面倒くさく感じてしまうユーザーさんもいらっしゃると思っています。
服が生活の中心ではない、という方が使っているサービスでもあるので、選んでもらいたいというニーズはあります。
そういう方に対して、パーソナライズチャットボットをより最適化して、色々な使い方に対応していきたいと考えています。

服を選びたい人は、自分で選べるし、コーディネートをおすすめしてもらいたい人にはコーディネートを提案する。
今もやっているんですが、そのレベルを上げていきたいと考えています。

今後、さらにファッションのサブスクの認知を広げていく

コーディネートをサブスクサービス側がするというのはなかなか難しくて、ユーザーが届いた服が気に入らなかったときの不満というのはかなり大きいんです。
なので、提案はしてもらうけれども、最終的には自分で選ぶといういいとこ取りくらいが最適なんじゃないかと思います。

ー今後のメチャカリの展開は?

事業としても、自分としても、今年はパーソナライズの強化がテーマですね。

あとはメチャカリとして会員20万人の有料会員を目指しています。
そのために、マス広告は今後も続けていくでしょうし、マーケットを作り上げる活動をしていきたいと考えています。

中長期視点では、店頭の活用も視野に入れています。
いずれ、お店で借りてお店で返すようなことが出来ればと思っています。

例えば女子大生が、起きてそのままお店に行って、洋服を借りて、デートをして、お店で借りた服を返して帰る。
そういったことが出来てもいいんじゃないか、面白いんじゃないかと思っているんです。

それからやはり市場の拡大を自らやっていかなければいけませんよね。
サブスク事業は収益が安定している一方で、ファッションのサブスクに関してはまだ市場が小さい。
まずは、服を借りるという文化を作り出すことだと思っています。
それが伴わないと、どんなにサービスを研ぎ澄ましても、成長しないと思います。

まだ小さな市場の中でも、毎月5,800円を支払ってくれる会員が12,000人集まっているわけですから、事業としての手応えは感じています。
毎月5,800円ということは、年間で7万円近く支払っていただいている事になりますから。
大きなお客様です。

まだこれからユーザーは増やしていかなければいけませんが、ファッションのサブスクで12,000人も有料会員を集めているところはそうそうないんじゃないでしょうか。

ーありがとうございました

 

ファッションのサブスクリプション『メチャカリ』
ファッションのサブスクリプション『メチャカリ』テレビCM効果もあり、圧倒的な認知率を誇るファッションのサブスク『メチャカリ』。
有料会員は12,000人を超え、現在も順調に成長している。
今後、服を借りる文化を作り出す、という言葉の通りさらなる認知拡大を目指す。

『メチャカリ』https://mechakari.com/

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杉山拓也
大手SIerを経て、ベンチャー企業にて複数のB2Bメディアを立ち上げる。 その後アプリマーケティング会社を立ち上げ、500以上のアプリマーケティングを支援。サブスクリプション型のビジネスを通して継続的にユーザーとコミュニケーションする重要性を体感する。 サブスクリプションマガジン編集長。