若き起業家が挑戦する家具のサブスク『airRoom』サブスクの先にあるシェアリングエコノミーへの挑戦

今や多くの企業が参入している家具のサブスクリプション。そんな中、ミレニアム世代にターゲットを絞り込んだ『airRoom』が昨年登場しました。代表はFiNCで活躍した大藪雅徳氏。

今回は開始3ヶ月の『airRoom』にサービス開始前のサービス設計や価格設計、開始後の反響やユーザーの傾向、今後の展開などをお伺いしてまいりました。

『airRoom』運営の株式会社Elaly代表取締役兼CEO 大藪雅徳氏

『airRoom』運営の株式会社Elaly代表取締役兼CEO 大藪雅徳氏

 

狙うのはサブスクリプションの先、シェアリングプラットフォーム

ーairRoomサービス開始の背景は?

僕自身が20代前半で、いわゆるミレニアム世代です。物心ついた頃からインターネットがあり、Twitter・Facebook・instagramといったSNSを常に使っている環境で過ごしています。そうすると、毎日トレンドが変わっていく。

例えば、先週はあるインフルエンサーが「こんないいものがあるよ」とおすすめしていたものが、次の週になったら移り変わったりしています。その都度買い替えたりするわけなんですが、コストがかかってきますよね。そうしたときに、メルカリさんを使いこなして、安く仕入れてきて必要なときに使って、不要になったら売ることで波に乗っていくような行動習慣があります。

インターネットの世界では常にトレンドが常に移り変わっているのに、現実の世界では一度購入してしまうと固定されてしまっている。比較して見ていったときに、ファッションや雑貨といったものはメルカリでよく流通していて、流動性が高くなってきています。

一方で、例えば不動産や家具などは最近でこそサブスクリプション型のサービスで自由に住み替えができるサービスが出始めていますが、まだまだミレニアム世代にマッチした商習慣は形成されていないと考えています。10年前、20年前の方々が、インターネットが登場し始めた頃の状態のままサービスを提供している状態です。

それもあって、ミレニアム世代は家具を買わなくなり、家具業界自体もどんどん縮小していっている状態です。このペインをどうにか解決できないか?と考えたのがairRoomサービスを開始したきっかけです。

ー数ある課題の中で選んだのが家具だったということでしょうか

それは、今後の展開に紐付いてくるんです。大きく2つあります。

2020年のオリンピック、2025年の大阪万博で外国籍の方がたくさん日本に入ってきます。こうしたなかで、民泊やシェアハウスといった生活形態が一般化していくと思います。最近でいうとサブスク型住居サービス『ADDress』の登場などがありますよね。今の日本国内の物件の空きが20%くらいあるなかで、そういった空き物件を有効活用していこうとしているんですが、では、そこで使う家具はどうするの?という問題が出てくると思います。

誰が家具などの設備を買い揃えるのか、という問題が出てくる中で、家具を一時的に使いたいというニーズは出てくるだろうと考えています。なので、今から家具のレンタルに張っておけば、そこでビジネスとして大きくなる、というのが1つの理由です。

もう1つの理由としては、僕らが最終的に作っていきたいのは、家具のレンタル屋さんではないんです。モノをシェアリングするプラットフォームを作っていきたいと考えています。個々人でモノをシェアリングして、それを可視化できる文化を作っていきたいんです。

それを目指すとしても、今はまだモノを貸し借りする文化はないので、まずは借りる文化を醸成しようとしています。モノを貸す流れは、一部のスタートアップなどで出始めてはいますが、まだまだ一般的ではない。一方の借りる、という習慣はレンタルDVDなどの文化があったので、借りるモノを家具にリプレイスする敷居は低いと考えています。なので、借りるという生活スタイルにまずはシフトしましょうと。そして、次にモノを貸していく流れを作り出したいと考えています。

モノのシェアリングをする際には、ユーザーさんに安心感を持ってもらうことが必要だと思っています。まずは、借りたモノが安心・安全であることが必要です。

住環境内において、無くてはならなくて、かつペインが大きくて、レンタル運用されたときに一番安心感を与えられるプロダクトはなんだろう、と考えたときに、家具だったということです

 

『airRoom』大藪氏はFiNCでエンジニアとしてMVPを獲得するなど活躍していた人物

『airRoom』大藪氏はFiNCでエンジニアとしてMVPを獲得するなど活躍していた人物

 

ー少し話題はそれてしまいますが、大藪さんは創業前はFiNCさんでエンジニアだったんですよね

そうですね。起業そのものは、高校生のときに志していたので、大学に入ってからは成功確率をどう高めていくか?をひたすら考えていました。そんな中でインターンをしたのが、クラシルを運営するdelyと、FiNCだったんです。

airRoomのサービスローンチ前には、自分でモックを作って、澁谷のスクランブル交差点で人に声をかけて「このサービスどうですか?」というのをヒアリングし続けていました。ヒアリングして、ダメだとなれば、カフェに入ってまたモックを作って、ということを繰り返していましたね。

 

サービスローンチ前のテストでは定量・定性両面で分析

ーそれはサービスローンチに向けたテストも兼ねていたんでしょうか

はい、最初のうちはターゲットもどこに刺さるかわからなかったので、無作為にヒアリングをしていました。

僕らは、2つの仮説検証をしていました。1つは簡単なLPを作って広告を打つこと。事前申し込み受付という形でFacebook広告を実施していました。もう1つがスクランブル交差点でのヒアリングです。これで、定量的・定性的両面で分析ができました。

広告に関して言うと、Facebook広告での事前申し込みまでのCPAが200円から300円でとれていました。なので、一定のニーズはあるだろうと。一方で、LPでの事前申し込みだけだとどんな家具が借りたいのか?まではわからなかった。なので、ユーザーヒアリングという形で細かいニュアンスを聞き出していました。

検証は3ヶ月間、徹底して行っていました。

メーカーの遊休資産を活用した仕入れスキーム

ー家具のサブスクリプション各社で流通のスキームは違うのですが、airRoomさんはどういった仕組みをとっているのでしょうか

家具の仕入れは企業と提携しています。彼らの持っている遊休在庫を活用する仕組みをとっています。そのため、仕入れコストを低い状態に保っています。

ただ、この方式を永久的にとっていくわけではなく、いくつかのステップを踏むと考えています。先程の、最終的にはシェアリングを促進するというのもそうですし、今の市場環境のなかで家具は縮小しつつあるので、それを解決したいという思いもあります。

企業さんにとっても一定のメリットがあって、マーケティングをして認知度を上げていく。そのために在庫を活用させてください、というのがファーストステップ。次に、家具を仕入れてデータを蓄積していくのがセカンドステップ。サードステップとしては、オリジナルの家具を製造していくことを考えています。

 

ー仕入れの取引先の開拓はどうやっておこないましたか?

創業前に資金調達も含めていろいろな方とお会いしていたのですが、家具ECの大手さんからのご紹介などで開拓ができました。

 

ー家具ECとは競合サービスにはならないでしょうか

はい、家具のECとは明確にターゲットが違うんです。彼らは、家具を購入したい高所得層を狙っています。ソファが10万円とか20万円とか、価格はあまり関係なく、誰が作ったものなのか?などそういったところにこだわりを持つ層です。そういったところがairRoomとはターゲットが違うんです。

価格勝負ではなく、airRoomならではの付加価値を創り出していく

ー家具の問題や世代特有の特性を考えたときに、なぜサブスクリプションという形態をとったのでしょうか

ユーザーヒアリングをしていたときに、家具を1年縛りにしても1日で返してもらってもどちらでもいいと考えていました。ユーザーの目線にたったときに、必要なときに、必要なものを必要な期間だけ使えればいいわけですから。その価値を提供することで得られるのがコアバリューだと考えています。

そのときに、どこでお金を発生させるかというのをヒアリングしたり、ディスカッションするなかで、家賃と同じように毎月1回発生させるのが、ストレスが一番ないのではないか?という着地になりました。その結果がたまたま、サブスクリプションという形態でした。

 

ーサービス設計の際に最も課題になるのが価格設定(プライシング)だと思いますが、どのような考え方で設計したのでしょうか

確かに、プライシングは考えますね。大きく2つあって、1つは経済合理性です。どの家具サブスクリプションもそうだと思うんですが、買ったほうがお得なのか、借りた方がお得なのかというユーザー心理は常にあります。

僕らの想定しているペルソナ像では、賃貸契約の更新料がかかるタイミングで引っ越される方なんですね。引っ越しのタイミングで家具を一式揃えようとすると、大体15万円くらいかかります。でも、airRoomで家具を一式揃えてレンタルすると、12万円で済むんです。
家具一式購入するよりお得な設計になればいいので、あとは家具の原価や償却期間などを考慮して割り出したのが1つ目です。

一方で2つ目として、これは他の家具レンタルと違うのが、僕らは価格競争を望んでいないという部分です。価格競争で安さだけを追求していったときに、家具の場合は製造にしても仕入れにしてもどこかで価格が揃ってくると思います。そういう戦い方はしないつもりです。

例えば、24ヶ月後の引っ越しのサポートまでします、であったり、月に1回ハウスクリーニングが入ったりという、単に家具を借りるだけでなく他の付加価値をつけることで差別化を図っていくつもりです。

家具の高級化など差別化のポイントはいろいろあると思いますが、僕らのターゲットにしているミレニアム世代はそこまで家具にこだわりがあるわけではないので、生活の不便を解消するという部分にフォーカスしています。

配送をあえて自前で行うことで唯一の顧客接点を重視

ー現在の価格設定だと、配送料が込みになっているんですが、家具は配送料や組み立て費用が高いのではないでしょうか

2つあって、家具レンタルマーケットはまだ黎明期なので、どれだけユーザーに使ってもらえるかにコミットをする必要があると思っています。それに対して赤字をどれだけ掘ろうと関係ないと考えています。なので、配送料はとっていません。

もう1つは、配送を自社で行っています。配送を外注した場合、サイズによって異なってきますが4,000円ならずっと4,000円かかってきます。僕らの場合、配送を内製化しているので、時と場合によって2,900円になったり、効率化することで配送料を最適化していくことができます。

プライシングにも関わってきますが、最適化されたところで請求していくように変えていく可能性もあります。

配送の内製化については、一度、外注しようと考えたこともあったのですが、配送をやってみた結果、配送の現場で「今届いたソファに合う家具ってほかにないんですか?」みたいなコミュニケーションが発生しているんです。

家具の場合、そこまでコンタクトできるポイントが多くないので、配送というコンタクトポイントでUXを高めることで価値を提供できると考えています。外注という手段もありますが、今の段階から配送を内製化していってデータを蓄積していくことで、中長期で見ればペイしてくるだろうと考えています。

 

ー配送が自前ということは家具の保管場所も自社で用意しているんでしょうか

はじめは家具の仕入先に保管されているものをお届けしています。戻ってきたものが自社で用意している倉庫に入ります。

想定していなかった家具の新しい使い方を発掘

ーサービスを始める前と、実際に始めてみて想定と違った点はありましたか?

買い切り型だととれなかった層がairRoomで契約してくれているというのはあります。

チャーンレートが高くなった出来事があって、昨年12月に一時的にチャーンレートが上がったんです。クリスマスや年末年始で、一時的に人が特定の住環境に揃う時期なんですが、そのタイミングで椅子が足りないから借りようと。当然、使い終われば返すことになるので、チャーンするんです。ただ、この現象は家具を購入するだけの世界では起こらなかった現象だなと思っています。

こういった、想定しなかった新しい使われ方をしたのは、airRoomをはじめてみてわかったことです。

自身と同じミレニアム世代へシェアリングエコノミーを広げていく

自身と同じミレニアム世代へシェアリングエコノミーを広げていく

 

ユーザーの面で言うと、個人と法人があって、個人なら25歳~34歳がボリュームゾーンで20代が契約者全体の60%を占めています。30代は20%という状況です。男女比で見ると6:4で男性のほうが若干多いです。

法人はマンスリーマンションや不動産仲介、民泊やシェアハウスといったところが利用しています。

個人と法人の比率は現在半々くらいです。

 

ーairRoomのイメージ動画だと、女性がターゲットのように見えますが

どうブランディングしていくか?を考えたときに、女性がオピニオンリーダーだと思っていて、そこの層をどうやってとっていくかを考えました。彼女たちが使っていて、満足している世界観を見せたかったんです。

下心みたいな話にはなりますが(笑)、男性もairRoomを使うことで、そういった女性からの支持をもらえることにつながってくると考えています。

 

ー昨年10月開始で、現在のユーザー数は

まだサービス開始したばかりなので、まだまだ公開できる状況ではないんですが、僕らはこれまでトップラインのユーザー数をどう伸ばすか?よりも、一人あたりのユーザーとのエンゲージメントをどう高めていくか?に注力してきました。

これまで3ヶ月走ってみて、継続率が90%を超えている状況なので、一定の基準値は超えているのかな、と思っています。

 

ー継続率が高い一方で、チャーンするユーザーの動機はどういったものがありますか?

解約理由で全体の4割を占めるのが、一時的なイベントで使いたかったという需要です。一時的に使って解約する、という理由になります。

残り6割がサイズが違った場合と、利用用途が違った場合があります。利用用途で言うと、例えばデスクワークで使うつもりで借りたけど、座面が硬かったといった理由です。

こういった解約理由から、データを蓄積してチャーンを下げるようにマッチング精度を上げていこうとしています。

資金調達も視野に入れながら全国展開、そして家具以外のサブスクリプション化に展開

ー現在は東京のみのサービスですが、ユーザー数拡大のための全国展開はしていきますか?

そうですね、現在は東京のみですが、近く1都3県を対象地域に拡大します。それから近々関西支社も立ち上げる予定です。

 

ー支社拡大や自前配送となると、いかに仕入れコストがかからない仕組みでも、資本的な体力は必要になってくるのでは?

そうですね、全くかからないというわけにはいかないので、そこはエクイティ(出資)でもお金を集めているんですが、家具を金融商品化していこうと考えています。具体的には、家具を銀行さん(リース会社)に買ってもらって、それを毎月お返ししていくようなスキームです。

 

ーどういうスキームですか?

リース会社に一旦商品を購入してもらって、それを貸し出す。そこで得た収益から返済にあてていくといった仕組みです。

 

ーそうすると、家具の稼働率が重要になってくると思います

おっしゃる通りです。家具が稼働していないといけないので、ユーザーとのエンゲージメントを高める取り組みに力を入れています。

 

ー今後さらに改善していく点は

airRoomを使う価値を高めて行く必要があると思います。ニュースによればIKEAさんもサブスクリプションに参入してくるということもありましたし、家具のサブスクリプションは既にいくつか存在しています。そうした中で、airRoomを選ぶ価値を明確にできるポジショニングはしていく必要があると考えています。

あとは、マッチング精度をどう高めていけるかだと思っています。データを蓄積して、最適な家具をマッチングすることができれば、ユーザーさんの満足度も上がっていきます。加えて、この先自社のプライベートブランドを立ち上げることで、利益率も上がっていくと考えています。

 

ー今後のairRoomの展開は

直近一年以内は、airRoomの全国展開を進めます。まずは使ってもらい、どの物件にもairRoomの家具がある状態を作りたいと考えています。

その後、家電やファッションなど、家具以外のレンタルにも展開していく予定です。皆さんのスマホにairRoomのアプリが何かしらインストールされている状態で、社会的なインフラになったところで、今度は皆さんの持っているモノを貸し出してみませんか?という問いかけをしていきます。

ーサブスクリプションを超えて、シェアリングのプラットフォームになっていくわけですね

おっしゃる通りです。

ーありがとうございました

 

家具のサブスクリプション『airRoom』
家具のサブスクリプション『airRoom』『airRoom』は、約3000点の家具から好きな家具を選んで借りることができるサービス。
現在は東京都のみの対応となっているが、順次全国に展開していく予定。
また、引っ越しサポートなど若い世代には嬉しいサービスも拡充していく。

『airRoom』https://air-room.jp/

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杉山拓也
大手SIerを経て、ベンチャー企業にて複数のB2Bメディアを立ち上げる。 その後アプリマーケティング会社を立ち上げ、500以上のアプリマーケティングを支援。サブスクリプション型のビジネスを通して継続的にユーザーとコミュニケーションする重要性を体感する。 サブスクリプションマガジン編集長。