[インタビュー]ユーザーが意識する必要がないところまで値段を下げる、家具のサブスク『CLAS』の価格戦略とは

月額定額で家具をレンタルできる、家具のサブスクリプション『CLAS』。
今回は初代バチェラージャパンにも選ばれた株式会社クラス 代表取締役社長の久保裕丈氏にインタビューさせていただきました。

『CLAS』では価格設定(プライシング)にかなり注力しており、頻繁に価格を見直すことでユーザーメリットを出しながら、市場を拡大していこうとしています。
その戦略に迫ります。

家具のサブスク『CLAS』運営の株式会社クラス 代表取締役社長 久保裕丈氏

家具のサブスク『CLAS』運営の株式会社クラス 代表取締役社長 久保裕丈氏

 

家具はユーザーペインの固まり それをサブスクリプションで解決する

―サブスクリプションサービスCLASをはじめた経緯はなんでしょうか

引っ越しを何回かしていて、その都度家具を買い替えていたんです。
家を借りるというのは当たり前なのに、そこに入る耐久財が借りられないというのが気持ち悪いな、と思ったのが原体験です。

まずは、自分がこういうサービスがあったら嬉しいのにな、という強烈なニーズがありました。
家具に対して感じている課題感だったり、ニーズから、CLASのサービスを発想し始めたというのがまず1つです。

家具のサブスクリプションというと、オペレーションや製造が非常に重たいので、そこに対して強い人間と一緒にやらないと死んでしまうな、と思っていたんですね。
そこで、たまたま家具をずっと買わせてもらっていた友人がいたので、その人間と一緒に立ち上げようという事になったのが、もう1つの理由です。

ー家具に対する課題とは?

家具って、全方位的にユーザーペインの固まりだと思っています。
例えば、買う時って服とかと違ってすごく時間がかかるじゃないですか。
お店も点在していて、そのお店をぐるぐる回らないといけない。

そして、一回買ってしまうともう交換することもできない。
服以上に、間違ったものや間違ったサイズのものを買ってしまうと不便を強いられます。

本体価格は安く見せている家具屋さんでも、配送料で無茶苦茶高い金額をとってきたりとか、別途組み立て料が設定されたりして、配送や組み立てでもユーザーペインが大きかったりするんですよね。

ユーザーペインの解決を目指しCLASは立ち上げられた

ユーザーペインの解決を目指しCLASは立ち上げられた

 

家具を買うタイミングって、何かしら他のことでお金が出ていくタイミングだと思うんですよね。
例えば引っ越しもそうですし、子どもができたときなど。
ライフステージが変わるタイミングで家具を買うと思うんですが、ライフステージが変わるときって他でお金が出ていってしまったりして、家具を買う余裕がなかったりするんですよね。
お財布のシェア問題もあると思うんです。

捨てるときも大変で、行政にお願いすれば安いとはいえ、目黒区や世田谷区だと連絡しても2週間や3週間取りに来てくれなかったり。
明日にはもう要らなくなってしまう家具が、2週間待てと言われても厳しいじゃないですか。
女性一人でゴミ置き場まで持っていくのも大変だと思います。

そういうふうに、家具ってすごくユーザーペインが放置されているなと感じています。
こうしたユーザーペインを、サブスクリプションという形であれば解決できるな、と考えたのがサービスの背景です。

ーサービスの立ち上げ時期にテストなどはされましたか?

ある種ベータ版くらいの時期と捉えていたのが、去年ローンチしてから12月の末あたりまでを1つの期間として設定していました。
あとは、サービス開始前に200人にアンケートをとったりして、本当にこのサービスがはまるのかどうか、調査をしました。
その調査で、ニーズの有無を確認しました。

もう1つ、調査で見えたのが、ユーザーが家具のブランドやデザインに対するこだわりが薄いということも見えてきました。
アパレルとかだと、このブランドが好き、このデザインが好きというのがある。
しかもそれが年ごとに変わっていくんですよ。
それが家具に関してはなかったんです。

買うフリークエンシーが、ファッションと比べて圧倒的に低いので、リテラシーが上がらないというか、こだわり方が分からないのが家具なんだなということが分かりました。
であれば、より普遍性の高いものであればサブスクリプションに適しているかな、とわかったことが調査での学びでしたね。

家具のサブスクリプションの鍵が価格設定である理由

ーサブスクリプションというと価格の設定が一番の悩みどころではないかと思うのですが、価格設定はどうやって行ったのでしょうか

今の価格を、2月の段階でベースの価格をさらに下げるんですね。
ベースの価格を下げつつ、さらにそれが階段状にどんどん下がっていくというプライシングをとります。

おっしゃる通り、プライシングがこのサブスクリプションビジネスの肝だと思っています。

今後の新価格に対しての狙いというのは、ユーザーは買ったときと借りたとき、どっちがお得なんだろうと考えると思うんです。
その方程式があんまり頭に浮かばなくなるくらいギリギリなところまで価格を下げていく。

ユーザーが価格を意識しない限界まで下げていくと語る久保裕丈氏

ユーザーが価格を意識しない限界まで下げていくと語る久保裕丈氏

家で言うと、今都内だと9割以上が賃貸に住んでいると思うんです。
経済合理性で考えると家を買ってしまったほうがいいよ、とよく言われるんですが、買ったほうがお得なのか借りたほうがお得なのかといった計算式は考えずに賃貸に住むわけですよね。
賃貸においては、もはやそういった計算式が浮かばないところまでプライシングがされていると思うんですよ。

家具もそこまで下げる必要があると思っていて、我々の利益の回収って遅くなるとは思いますが、それをやらないと文化が定着しないと思っています。
プライシングに関してはそういうポリシーでやっていこうと思っています。

ーとはいえ事業としては黒字化を目指すという側面もあると思いますが、それについてはいかがでしょうか

あまり黒字化を急いではいないです。
この手の商売というのは、最初にスケールを取ってしまった者が価格の決定権を持てると考えています。

ー家具のサブスクリプションというと投資額も大きくなると思うのですが

相当程度に大きい投資が必要だと覚悟していますので、株式による調達、借り入れ双方をフル回転させる計画です。

 

ー非常に参入障壁が高いですね

僕の場合、あんまり参入障壁については気にしていません。
今の時代、どんな商売であろうとやろうと思えば出来てしまう。

その中でも家具のサブスクリプションは投資がかさんだり、オペレーションがヘビーだったりするので、参入するのは難しい部類だろうなとは思います。

サブスクの最高のUXは長く使ってもお客様の損にならないプライシング

ー家具というとモノが動くので送料がかかると思いますが

家具の配送は今、3PL(3rd Party Logisticsの略。物流機能の第三者委託。)ですが、ゆくゆくはここも内製化していこうと考えています。
お客様に長く使っていただく上で、お客様接点をきちんと作っていかないといけないと考えています。
ネットの商売である以上、お客様と直接コミュニケーションできるのは配送のタイミングしかないので、UX最大化のためにも内製化して、きちんと教育をしていかないといけないと思っています。

ー利用するユーザーはどういった方が多いんでしょうか

個人・法人双方やっているます。
規模でいうと法人の方が多いので、オフィス家具のニーズはかなりあります。
マンスリーマンションのオーナーやデベロッパー、数十部屋単位のホテルやホステルといったところでのニーズは非常に高いですね。
意外とニーズが大きかったのが、超短期型のショールームやオープンルームなどに対する“ステージング”と呼ばれる需要です。

個人では20代~30代の方が多いですね。
お客様のアンケートをとらせていただくと、IT企業の方だったり、比較的住み替えの多いビジネスマンにレンタルのニーズが多いようです。

ー今の会員数はどのくらいいらっしゃいますか?

有料会員と無料会員がありますが、無料会員で言うと既に1万人は超えているという状況です。

ー先程も話題に上がったUXの部分について、ユーザー接点の工夫などはありますか?

今、CRMの部分はあまりやっていないです。
例えば健食とかであれば、体験キットがあって、その後定期購買につながってという流れがあると思うんですよね。
毎月届いたりするじゃないですか。

CLASの場合、一度家具を入れるとその後はずっと使っていただくというモデルなので、あまりしつこくコミュニケーションをとらなくていいのかな、と思います。
使って頂いていて、ご満足頂く部分が大事なんじゃないでしょうか。

弊社は階段状に価格を下げていくので、例えばソファーなんかも3年使って頂いた後って月額が500円とかになるんですね。
気に入って使って頂いて、要らなくなったときに必要に応じて引き取りに行きます、というのがメリットなんですよね。
処分するのに便利屋さんなどを呼んだら2万円とか3万円とかかかってきますが、すぐに引取できる。

なので、長く使って頂いてもお客様の損にならないプライシングというところで、今考えています。

ープライシングが柔軟に設定されていると感じたのですが

今はまだまだプロダクトマーケットフィットが完璧には出来ていないと思っていて、プライシングについてもテストしていかないといけないかなと思っているんですよね。
家具のサブスクリプションってまだ新しいので、参考にする他社がまだ存在していない。
だから、自分達でテストしながら柔軟に設定していく必要があるのかなと思っています。

家具業界の市場規模が縮小する中、サブスクで裾野を広げて新たな市場を開拓する

ー家具のサブスクリプションを始めてよかったことは?

今うちで一番出ている商品はベッドとソファなんです。
その意味って何だろうと考えた時に、家具って大物になればなるほどユーザーペインが大きいんです。
そういたものからどんどん先に借りて頂いているということは、やっぱり世の中の方というのは、家具の購入や処分に大きな課題を持っていて、CLASを通してそういった課題を解決出来ていんだな、と思います。

そこがすごく嬉しいなと思います。

借りて頂いた方のインタビューも行っているんですが、売り切りの家具屋では捕捉できていないユースケースというのがあると思います。
例えばソファなんて、あっても無くてもいいわけじゃないですか。
一人暮らしだったらベッドで代用できてしまったり。

あったらいいなとは思うけど、買うとなるとちょっと重たい。
でもレンタルだったら使ってもいいかな、という。
こういうような、買い切りでは捕捉できていないようなユースケースというのが掘り起こせています。

今、家具業界全体の市場規模って下がっているんですが、家具の裾野を広げることであらためて市場を広げていくことが出来る。
それがサブスクリプションならではかなと思っていて、すごくこのサービスを始めてよかったなと思います。

ー家具業界の規模は下がっているんですね

単純に単価が落ちすぎているというか、トータルで買う回数は変わっていないんですよ。
なので、家具の買い控えが起きているわけではないんです。
それで、市場規模としては下がっているという状態ですね。

安価な組み立て式の家具もありますが、一度組み立ててしまうともうバラせないんですよね。
引っ越し業者の中にはNGの家具もあるんです。
そうなると、引っ越しのたびに捨てることになてしまう。
それってとても環境にもよくないなと思うんです。

服とかであれば、まだ海外の方に送るとかが出来るんですが、質の悪い家具だとそれができないんです。
家具が使い切りになってしまう。

そういうのを正常に戻したいと思いますね。

ーサブスクリプションサービスならではの苦労などはありますか?

プライシングが出来きっていないということの裏返しかも知れないんですが、売り切りのものに比べてコンバージョンレートが低いな、と感じています。
以前は私はオンラインで服を売っていたんですが、運用型広告を結構回せばそこそこユーザーが取れるんですね。
一方でサブスクリプションとなると、定期的な支払いの契約行為になってくるので、コンバージョン掘り起こしまでがちょっと高いな、と感じています。

そこもプライシングがこなれてきて、UIも整ってくれば、ちゃんと回るのかなと思っているんですが。

ー今、CLASのページにある、会員登録で1,000円キャッシュバックは新規獲得のための施策になってくるのでしょうか

あれは、そんなに強いパンチはないですよね(笑)
ないよりあったほうがいいかな、くらいでやっているような感じです。

定期の健食や美容だと、定期で8,000円とかの商品が初回パックで1,980円とか、半額とかありますが、課金をとるためにはそれくらいパンチのあることをやってもいいのかな、とは思いますね。

プライシングの実装がされるのが2月なので、まだそこまでアクセルを踏み込んでいないというのはあります。
あとは、2月中~3月頭くらいに家電系の商品カテゴリが追加されるので、アクセルを踏むのはそこからでいいかなと思っています。

ー家電も扱うんですね

家電も扱います。
電子レンジや冷蔵庫と行った白物だったりとかも扱っていきます。

サブスクに適した家具の要件は売り切りとは全然違う

ー今後のCLASの展開についてお聞かせください

やっぱり大事なのが、家具を買わない、というよりも家の中にある耐久財を買わないという文化を定着させていくことが大事だと思ってるんですね。
そのためにはプライシングがすごく大事ですし、無限にSKU(Stock Keeping Unitの略。小売業での単品管理の意味。)を広げていってしまうとオペレーションが煩雑になってしまうんですが、ある程度のカテゴリを広げていくということは大事だと思います。

もう1つは、CLASはオリジナルの家具を多く使っていますが、サブスクリプションに適した家具の要件って、売り切りとは全然違うと思います。
レンタルフレンドリーな家具の要件をどこまで突き詰めていくことができるか。
ものづくりとして、今まで数百年と続いてきた家具の常識をどこまで変えられるのかな、というのが今後の我々の課題かなと思いますね。

ーレンタルフレンドリーというと?

そもそもの耐久性がどれだけ高いか、ということであったり、返却されてきたときに新品の状態にリペアしてお客様のもとに届けることができる、在庫を多く積む必要があるのでどこまで部品を共通化できるかなどです。
例えばベッドとソファとか、そういったところでの部品共通化率をどこまで高められるか。
在庫リスクを軽減すれば、またプライシングを下げられるので、よりお客様メリットが生まれることになる。
レンタルフレンドリーというのは例えばそういうことかなと思います。

ー家具のリユースがどれだけ出来るか、ということですね

そうですね、リユースしないで設計すると、売り切りと対して変わらないというか、ほぼローンとかリースみたいなモデルになってしまうと思うんです。
環境問題にもアプローチ出来なくなってしまう。

家具をリペアして回すことができれば、最終的にはプライシングに転嫁できるのでもう一段値段が下げられて顧客メリットにもつながると思うんです。
なので、新品同様にリペアしてそれを使い続けることで、環境にもやさしく、ユーザーにも嬉しいサービスになると思っています。

ーありがとうございました

 

家具のサブスクリプション『CLAS』

ユーザーペインの解決を目指しCLASは立ち上げられた

CLASではあらゆる家具をサブスクリプション型で利用することができる。引っ越し、進学、就職、結婚などライフステージに合わせて家具を借り換えられるほか、法人にも対応。常にプライシングを見直し、家具をサブスクで利用するのを当たり前の世界にしていきたいとしている。

『CLAS』:https://clas.style/

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杉山拓也
大手SIerを経て、ベンチャー企業にて複数のB2Bメディアを立ち上げる。 その後アプリマーケティング会社を立ち上げ、500以上のアプリマーケティングを支援。サブスクリプション型のビジネスを通して継続的にユーザーとコミュニケーションする重要性を体感する。 サブスクリプションマガジン編集長。