だからサブスクは失敗する〜2020年生き残るサブスクの条件〜

 

 やっぱり来てくれたお客さんは、サブスクの場合はもれなく最上級のお客様なので、そのお客様に対するおもてなしとか、顧客管理システム、CRMって言ったりしますけど、それらを使いながらお客様とコミュニケーションをとっていくことは重要です。席が混んでる時でも優先席をつけてあげるとか、色々な特典をつけられると思いますが、収益を出せる仕組みとお客様をしっかり囲っていく仕組みがあることで、本当のサブスクになると思います。

 

 今、その世の中にあるただお得なだけのクーポンや定期券とか呼び方色々ありますけど、そういうふうのはまず改善をしていかない限りは昔と同じフラッシュマーケティング的なビジネスと同じ道を今後辿っていってしまうと思いますね。

 

ー 2つ目が新規顧客の為のサブスクですが、どういうことなんでしょうか

 

 それこそ2019年に見られたのが、半年でサービスを終了した紳士服のサブスクや、思ったほどユーザーが集まっていなかった自動車大手のケースなどがそれにあたると思います。サブスクというのは最上級のお客様に向けたサービスであるというのが大原則なのに、いわゆる自分たちのメインのお客様層を無視して、全然違うこれまで取ってこれなかったお客様を、サブスクというサービスで新規獲得しようという考え方ですね。これが2つ目の危ない失敗しやすいサブスクのケースです。

 流行りのサブスクでちょっと安くすれば、新しいお客さん使ってくれるだろうという幻想の元に、サービスを開始してしまう。今まで自社顧客にいなかったターゲットに対して、これまでになかった割引を提供してしまう。これによって何が起きるかというと、まず既存のお客様がすごく嫌な思いをする。

 本当に大事な自社のロイヤルカスタマーを無視して違う全然違う客さんに特典を与えるわけです。新たなお客様は、その会社からすると、見たこともない新しいターゲット層になるので、何を求めてるかも分からない。さらには、どういう悩みが解決されるかを、付き合ったこともないお客さん、自社がよく知らないメイン層以外のお客さんなので、本質的にわからない。

 結局安いだけのサブスクになってしまうんです。それだけではなくて、既存のお客様に対するロイヤリティーも低下させてしまう。サブスクがディスブランディングになってしまうんです。だから非常に危ないというかリスクが高いサブスクサービスなってしまうんです。

 

 じゃあどうしたらいいのかという話なんですが、当然ながら自社のロイヤルカスタマー、いわゆる常連客は誰なのかを再定義するんです。ファン層やロイヤルカスタマー層、VIP層ヘビーユーザーなど呼び方はたくさんありますけれども、そういうお客様のペルソナを作って、じゃあ実際そういうお客様が、何をしたらもっと便利に、喜んでくれるんだろうかとか、なに悩んでいるんだろうとか、顧客視点がスタートだと思います。

 新規の顧客をとるのではなくて、今いる上位のお客様をサブスクにご案内していくことで、サブスクの流れができると思うんですよね。

 新規のお客様をいきなり最上級のサービスで獲得するというのは乱暴でなんです。まずはちゃんと自社のサービスを使ってもらって、気に入って、初めてサブスクに誘導できると思います。新規顧客をサブスクで獲得するのは、乱暴に順番を飛ばしてしまってるところがすごくリスクなので、まずは自社のヘビーユーザーとは誰かと定義した上で、その彼らが「こういう悩みをもってたんだよ」とか「便利だよね」と言ってもらえるようなサブスクを定義する必要があるじゃないかなっていうことですね。

 

ー 3番目の事業者都合のサブスクについてはいかがでしょうか

 

 これはもう本当に一番酷い考え方なのですが、サブスクをやれば儲かるんじゃないかとか、サブスクをやれば人が集まってくるんじゃないかとか、そういった感覚だけでサブスクサービスを始めてしまう企業が非常に多いですよね。

 

 あまり設計もせずに、自社都合でこのサブスクは何回使い続けないといけませんよとか、縛りを設けたり。解約のハードルがすごく高かったり。実質縛りと同義なんですけど、違約金が発生するとか、どうやって解約すればいいかわからないとか。

 こういった設計をするのは得てして事業者都合のサブスクじゃないですか。

 

ー そうですね

 

 一度、嫌な思いをしたお客様はサブスクを嫌いになると思うんですよね。本来サブスクというのはやっぱり継続してお支払い頂くビジネスじゃないですか。継続してお金を支払い続けるということは、継続して満足し続けていることであるので、事業者は継続してサービスを改善して向上させていかないといけない。

 なのでサブスクって終わりはありません。ずっと成長し続けるサービスです。

 普通の売り切りのビジネスでは最初の契約、最初の申込み、あるいは最初の購入がゴールになるから、どうしても縛りとかやっちゃいたくなるんです。一方で、サブスクはただの始まりでゴールはないわけで、それをどれだけ長くお使いいただけるかということに対してお客様と真摯に向き合って、そのいい声も悪い声もフィードバックをもらってそれを改善に生かし続けて満足し続けていただくというのがサブスクあるべき姿です。

 お客様と一緒にサービスを作っていくという関係性が、お客様との間にあるのにそれをシャットアウトして縛ってしまうっていうのは、本質的にサブスクのあるべき姿ではないですよね。結局、携帯のキャリア縛りもなくなるわけじゃないですか。あれって事業者側の都合なので。

 きちんとお客様と継続的にお付き合いするために、常にサービスを改善し続けないと、焼き畑になってしまい、極端な話かもしれませんが、サブスクが嫌いな人が次々に増えるとやっぱりサブスク全体にとってよくないですよね。もちろん、事業者として収益をしっかり確定させていきたいというのは分かるんですけれども、やっぱり顧客視点に立たない縛りや契約はできるだけなくしていきたい。

サブスクマガジン 編集部
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