だからサブスクは失敗する〜2020年生き残るサブスクの条件〜

2019年はビジネス誌だけでなく、民放テレビ局や女性誌にまでサブスクが注目された年でしたね。一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会の理事長、佐川隼人氏から見た2019年のサブスクリプションビジネスと、今後2020年以降に生き残るサブスクの条件についてお聞きしてきました。

 

ー 2019年はサブスクビジネスが注目された年でしたね

 

 やっぱりこの2019年、メディアさんだけでなく事業者さんからもサブスクにとってどうでしたかと聞かれることが多かったですね。印象としては、本格的にサブスクに新規参入する事業者さんがこの一年で増えましたね。

 同時にいろんな撤退事例とか、あまりうまくいってませんよとか、色んな会社から情報がでていて、現状まだまだ半分以上の人が試行錯誤しながら、もがいたり失敗したりしているのだと思います。そのいくつかにサブスクのサービスを見ていても、あと一歩だなとか、これはちょっと厳しいだろうなみたいなサービスがありますよね。

サブスク振興会理事長が語る2020年のサブスク

 やっぱそういうサービスは本質的にうまくいかないと言うか、ここだけはおさえておこうよみたいなところをすっ飛ばして事業を進めるケースが散見されました。

 今回の記事ではそのいくつかのケースをケース別に話すことで、サブスクビジネスで出会う地雷を踏まないですむような情報発信ができたらなと思っています。

 

ー 先日、トヨタKINTOのニュース見ていて、蓋を開けたら実は1年で900件ぐらいしか申し込んでいなかったみたいなこともありましたね

 

 そうですね。じゃあ、どうしてそういうことが起こるのか。今回は大きく、3つの失敗要因について説明したいと考えています。1つ目が安いだけのサブスク。2つ目は、新規顧客獲得のためのサブスクです。3つ目は、事業者都合のサブスク。

 

ー 消費者を置いてきぼりにした、事業者さん都合のサブスクはサブスク振興会などでも事あるごとに話題にのぼっていますね

 

 事業者の都合でサブスクを初めてしまうのは、一番ありがちなんですよね。この記事を読んでくれた人が、うちはこれに当てはまっているなと気づいて、なんらかの改善が出来たら理想です。

 大前提としてサブスクというのは、何度も何度も買ってくれるいわゆる最上級のお客様に向けたサービスなので、やっぱりそこを取違えてビジネスをしてしまうとおかしな方向に行ってしまいます。顧客を大事に、慎重にサービス設計や顧客メリットを考えながらサブスクサービスを設計して行く必要がありますよね。

 

ー 3つの失敗について詳しくお聞かせください

 

 まずは1つ目からいきましょうか、安いだけのサブスク。それこそ、うどん屋さんとかの定期券とか、飲み放題の定期券とか色々出ていますよね。いわゆるサブスクって、まずその大前提として、僕が言っているお得で便利で悩みが解決される、その頭文字を取ってONB(オンブ)というものがないと、安いだけだとお客様は安いことにしか満足が出来ていない状態になります。そうなると、どれだけ値引きできるかみたいな話になってしまいます。

 そこで、お値段だけじゃなくて便利で、かつ、客様が持ってる悩みがそのサブスクを活用することで解決されることが重要です。ライフタイムバリュー(LTV)と言いますが、継続してもらう期間がどんどん伸びていって収益も最大化するわけです。

 便利でもなくて、悩みも解決されないお得だけのサブスクってまずお得なことにしか満足しないお客様だけを集めるツールになってしまう。これってお客さんの質としては、高くないんです。いいお客様ってやっぱり相応の金額でもサービスを利用し続けてくれるお客様だと思うので、“安くないと買えませんよ”っていうお客様にいくら物を売ったとしても、本質的にその企業に収益をもたらさないんですよね。

 

 一昔前にフラッシュマーケティングというビジネスモデルがあったと思います。半額になるクーポンサイトが色々出ては一瞬でなくなってしまいましたよね。結局フラッシュマーケティングのように、安いから行くって本質的にお店にとってプラスになる要素をもたらさないと考えています。

 にもかかわらず、昔のクーポンビジネスがそのまんまサブスクとしてまた同じことをやっている、安いだけのサブスクとして復活してしまうことだけは避けなければならないと思いますね。

 

 具体的にどうすればいいのか。例えばコーヒーのサブスクリプションを提供しているfavyさんの仕組みが良く出来ていて、入り口としては安い・お得でとにかく来てもらう。来てもらった上で、クロスセルをしていくとか、きちんと収益を出していく仕組みを作っています。

 逆に一番良くない事例が、食べ放題飲み放題クーポン。これだけでは収益はでないです。やはり企業である以上、収益をださなければいけないのが大前提なので、サブスクできっちり収益をだせる仕掛けと言うか仕組みがセットになっていないといけないですよね。

吉澤 哉
プロデューサー、プランナーとして商品のブランド化・ファンの獲得を目的に各種ブランドサイトを構築。サイト制作だけでなく、イベントのプランニングを多数実施。 大手ECサイトの総合ディレクションやUI改善を担当。 イベントのノウハウで、常にリアルマーケティングを意識した制作をするプロデューサーとして支持される。 テモナ株式会社 PR担当