【インタビュー】プロ料理人のサブスクリプション『シェアダイン』 ベータ版を経てサブスク導入まで

 

-サービスを単発の発注形式からサブスクリプション型にしていく上で、どんな部分をブラッシュアップしていたのでしょうか

そもそも、何人の料理家さんを選べるのが最適なのか?であったり、どういうタイミングで料理家さんをスイッチしているのか?マッチングの精度などです。定期のコースを選ぶときに自分の必要なタグを選択することで、最適な料理家さんが表示されるような仕組みを考えて、そこから逆算してシステムを作り上げていました。

プランについても、月2回訪問する場合には2人の料理家さん、3回の場合には3人の料理家さん、4回の場合には4人の料理家さんが選べるように設定しています。

価格設計についてもかなり検討しました。よく「すごく安いね」と言われるのですが、12,000円で栄養士さんが月2回来てくれる設定にしています。安いとは言われるのですが、これまでのベータテスト期間で調査する中では、例えば帝国ホテルのシェフ経験をお持ちの料理家さんが3時間4,000円で出張してくれるような価格も散見されたので、「このままでは早期に料理家さんの価格破壊が起こってしまう」と考えて、ある程度の価格はきちんと担保した設計になっています。

初期の段階で料理家さんへのインタビューも実施しており、そこでどのくらいの価格であれば出張して調理したいか?といったことをヒアリングしています。そのうえで、価格破壊が起こらないような設定をしています。

 

スポット契約時代にも最大7割のユーザーが継続する継続率の高さ

-料理家さんだけでなく、ユーザーさんにもインタビューなどされたのでしょうか

はい、例えば説明文のまったくないプロトタイプをユーザーさんに使って頂いたりといったテストも行いました。サブスクリプション型で、複数の料理家さんを選ぶようなサービスがこれまではなかったので。例えば月2回の契約の場合、2人の料理家さんが選べるといったことが画面上ですぐに理解できるかどうか、といったことを確認していました。

 

-サブスクリプションの設計をしている期間でも単発の契約の継続率が高かったとお聞きしていますが

はい、最大で7割のユーザーさんが契約翌月も発注を続けていました。中には「毎月申し込むのが面倒なので定期のプランはありませんか?」といったご要望を頂く方もいらっしゃいました。また、2ヶ月以上の期間で見るともう少し継続率が高くなります。一月おやすみして、次の月に再度契約する方もいらっしゃいます。

シェアダインは単発契約でも継続率7割という高さだったが、さらに今回サブスクリプションメニューを取り入れた

 

-シェアダインはどういった方が利用されているのでしょうか

もともと、子育て世代を想定して設計していたこともあり、全体の7割くらいが子育て世代の方です。今ではさらにカテゴリを増やしていて、単身の方の利用や、お子様が家庭を出られたアクティブシニアの方にもご利用頂いています。

サブスクリプションサービスをリリースしたときも、子育て世代からの申込みが多数を占めると考えていたのですが、単身の方からのお申込みが非常に多かったです。単身の男性で体作りをしているような、食に関心の高い方のニーズを感じました。次に多かったのが、アクティブシニアの方でした。なので、サブスクリプション型に変えてから、ユーザー比率は大きく変わりました。

既存の単発ユーザーさんのサブスクリプションへの乗り換えも進めています。サブスクリプション型サービスに価格的なメリットを見出していただけるような設計にしたり、付加サービスでさらなる価値をつけるとともに、既存ユーザーさんへのサブスクリプションサービスの認知をしてもらえるような導線設計といったことを進めています。

 

食に対しての悩みの深さがリピート率に反映

-単発での申込みの時点からリピート率は高かったのですが、なぜサブスクリプション導入前から高いリピート率を実現できたのでしょうか

本当に、悩みを抱えている方が利用している背景があると思います。離乳食で困っていて、料理家さんの知恵を借りたい方が料理家さんに相談して、実際に一緒に手を動かしてレシピを覚えるといったこともできます。こうした料理家さんとのリレーションが、便利な時短サービスを超えた価値を提供しているのではないかと考えています。

料理家さんとのリレーションはかなり密にとられているユーザーさんが多いです。忙しい共働き世帯を想定していたので、当初はチャットなどのコミュニケーションは嫌がられるのではないかと考えていたのですが、かなり利用されています。サービスを利用したあとにも「このお料理がおいしかったです」「このお料理は子どもがとても喜びました」といったやりとりをされていたりしています。単発でのお申込みの方でも「次はいつカレンダー空いていますか?」といったやり取りがされているようで、かなりアクティブです。

 

-シェアダインは料理家さんとユーザーさんをマッチングさせるプラットフォームというわけなんですね

はい、そうです。サービスを開始して気づいた事でもあるんですが、もともとは自分たちのペイン、つまりはユーザー側のペインを解決するためにサービス設計していたのですが、最近では料理家さんのペインの解決にもつながると考えるようになりました。

もちろん、最初の20人の料理家さんを集めるときは大変でした。特にCtoCのサービスの場合、サービス提供者側を開拓することが大変とよく言われます。そうした中で私達は食のカテゴリに絞ったことで、食の専門家が集まってくるプラットフォームになったと思います。

日本の外食産業は1997年くらいをピークに縮小をしているんですが、調理師の国家資格を取る方は年間6万人ずつ増えているんです。潜在的にも200万人の調理師がいると言われています。縮小している外食産業の中で、伸びているのはチェーン店だったりします。調理師がクリエイティビティを発揮する場がなくなり、食べている人の顔も見えなくなってきているという状況にもなっています。

シェアダインを開始した当初から、有名な料亭出身の方や、ホテルのシェフ経験のある方などが集まって頂いています。プロの調理師さんや、栄養士さんが柔軟に働ける場がいままであるようでなかったんです。料理家さんにとっても非常に魅力のあるサービスになっています。

サブスクマガジン 編集部
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