企業がサブスクリプションに取り組む前に検討すべき3つの視点

 

顧客が本当に欲しい価値とはなにか?サブスクリプションで必要な視点

サブスクリプション型ビジネスで重要なことは、徹底的に顧客視点に立つことと言われます。

これは、従来型の売り切り型ビジネスのゴールが契約だったのに対し、サブスクリプション型ビジネスの場合には契約はスタートに過ぎず、顧客との関係を築き、顧客のニーズを満たし続け、いかにして顧客と長く付き合うか?が収益化のポイントになるためです。

サブスクリプション型ビジネスは顧客が気軽に始められる分、いつでも顧客が解約できるという企業から見れば不安定な部分があります。(顧客にとってはメリットになりますが)
顧客視点に立っていないサービスは、早々に顧客離れを起こしてしまうため、契約の継続率も低くなりがちです。

「マーケティング発想法」(T.レビット)では、“ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である”という有名な言葉が記されています。
この言葉は、ともすれば自社の都合(ドリルを売りたい!)のみで発想してしまいがちなマーケティングや事業の企画者にとって、顧客の価値から商品を企画したり売ったりするための示唆を与えています。

サブスクリプション型ビジネスを提供する上で、この“ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である”という視点は非常に重要です。

2018年11月にトヨタがサブスクリプションサービスに参入しました。
豊田章男社長はCES2018で「モビリティー・カンパニーへと変革することを決意した」と明言しています。
参考: CES 2018 トヨタプレスカンファレンス豊田社長スピーチ

今まで車会社というハードウェア会社だったのに対して、人の様々な移動を助ける会社としてトヨタを再定義する意気込みが見えてきます。
顧客は便利な移動手段が欲しいのであって、車を所有したい人がすべてではないと言い換えられます。

顧客がサブスクを利用し続ける理由はあるか?

一方で、企業から見たときにサブスクリプション型ビジネスをはじめるにあたって、事業としてきちんと収益があがるのか?も考える必要があります。

サブスクリプション型ビジネスの収益を顧客一人あたりで見てみたいと思います。
図のように、顧客獲得のためのコストがかかった状態から始まります。

サブスクリプションの収益グラフ

顧客獲得コストは、広告宣伝費などマーケティングにかかる費用、営業が必要な商材であれば営業費用が挙げられます。
車や家具など初期の仕入れが大きい商材では、さらにスタート時の費用がかかってくることになります。

商材や単価によって様々ですが、顧客が継続して利用することで損益分岐点を超え、黒字化することになります。
損益分岐点に到達する前に顧客が解約した場合、赤字ということになります。

つまり商材の契約期間によって、顧客獲得にかけていいコストが算出できることになります。
継続率の高い(解約率の低い)商材であれば、顧客獲得にコストをかけたり、無料お試しや初回値引きなどの2ステップ設計も可能でしょう。

無料お試しを実施した場合の収益のグラフは、以下のように全体的に後ろ倒しになります。

サブスクリプションで無料お試しを導入した場合のグラフ

また、無料お試しや初回値引きなどの2ステップ設計によってより効率よく顧客が獲得できた(顧客獲得単価が下がった)場合のグラフがこちらです。

無料お試しで顧客獲得単価が下がった場合のグラフ

広告施策時に2ステップ施策の効果が出るようであれば、積極的に取り入れていきたいものです。

サブスクビジネスで重要なクロスセル・アップセル

もう一つ、サブスクリプション型ビジネスで重要なのが、顧客へのクロスセルやアップセルといった働きかけです。

クロスセルは、今契約しているサービスに加えて別の商材もついで買いしてもらう施策です。

アメリカのカミソリのサブスクリプション「Dollar Shave Club」では、次回お届け時にスキンケア用品などを簡単に追加できるようになっており、カミソリのみを購入するよりも顧客単価をアップさせています。

アップセルは、今契約しているプランよりも上のプランに申し込んでもうらうことで顧客単価を上げる施策です。

エントリープラン、スタンダードプラン、プレミアムプランと3つのプランが用意されている場合、エントリープランの顧客をスタンダードプランへ、スタンダードプランの顧客をプレミアムプランへとよりヘビーユーザー化していくことで、顧客単価をあげていこうという取り組みがこれにあたります。

クロスセル・アップセルしたときの収益をグラフにしてみました。

サブスクリプションでクロスセル・アップセルをした場合

わかりやすくするため、少し極端なグラフになっていますが、顧客単価の上昇に伴って利益が段階的に上がっていくイメージです。

自社のサービスを継続的に利用し続けてくれる上、より高いプランを選んでくれたり、追加で商品やサービスを購入してくれる、まさにVIP顧客と言えるでしょう。

まとめ サブスク型ビジネスでは顧客が満たしたいニーズ・長期的な関係・関係の深め方が重要

サブスクリプション型ビジネスでは、契約に至るまでにマーケティングや営業コストがかかります。
つまり、契約時点では赤字からのスタートです。
顧客のニーズを満たしているという商品開発は大前提になります。

顧客が契約を継続してくれれば、損益分岐点を超えて黒字化する、というモデルです。

サブスクリプション型ビジネスを黒字化させるためには、2つの方法があると言えます。

1.顧客に長期に渡って契約し続けてもらう
2.顧客一人あたりの獲得単価を下げる

1については、サブスクリプション型ビジネスで非常に重要なポイントです。
顧客が御社との契約を続ける限り継続的に利益が発生します。

逆に、御社のサービスの魅力が充分に得られずに、損益分岐点を超えることなく早々に解約してしまうようでは、顧客を獲得すればするほど赤字という事業になってしまいます。

2については契約時点での赤字を減らして損益分岐点をできるだけ前倒しにしようという考え方です。
例えば広告を最適化して顧客獲得単価を下げる、無料お試しや初回割引、サンプル送付など2ステップの設計を行って、より広告効果を高めるといった方法が考えられます。

エントリープランの用意など、顧客が契約しやすいプランを設けておいて、コミュニケーションをとりながらスタンダードプランにアップセルしていくのも有効な手段かもしれません。

サブスクリプション型ビジネスでは、顧客と継続的な関係を築くことはもちろんですが、獲得単価をきちんと把握してどこまでであれば顧客獲得にコストをかけられるか?を設計することも重要になってきます。

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杉山拓也
大手SIerを経て、ベンチャー企業にて複数のB2Bメディアを立ち上げる。 その後アプリマーケティング会社を立ち上げ、500以上のアプリマーケティングを支援。サブスクリプション型のビジネスを通して継続的にユーザーとコミュニケーションする重要性を体感する。 サブスクリプションマガジン編集長。