【インタビュー】小売からサブスクへ転換『leeap』が見たサブスクの最大のメリットとは

比較的早い段階からサブスクリプション型サービスを展開してきたファッション分野。今回はそんな中でメンズファッションのサブスクリプション『leeap』を運営する、株式会社キーザンキーザン取締役COOの大堂様にお話を伺ってきました。

ファッションのサブスクリプションleeapの大堂氏

同社は小売りのECからサブスクリプションビジネスへの転換を果たし、順調に会員数を増やしています。どのような経緯があったのでしょうか。また、小売とサブスクリプションビジネスの違いはどういったところにあるのでしょうか。

小売のECからサブスクリプションビジネスへ転換

ー2016年4月当初のleeapサービス開始の背景は?

弊社で当時、古着をコーディネートして販売するという小売をやっていました。コンセプトとしては、男性向けではなく若い女性をターゲットにしたサイトでした。ファッションが苦手な女の子が、身近にいるファッション上級者の女の子に教えてもらう、そしてそのコーディネートがそのまま買える、というものでした。

現実感のあるファッションで、「自分もこういう風になれるんだな」と思えることが重要だと考えていました。ファッション誌などではすごく綺麗なモデルさんなどが服を着ているんですが、非現実感があったりすると思います。そこで、ファッションが苦手な人と、得意な人を結びつけるといった小売をベンチャー的にやっていました。

そのサービスを運営している中で、スタイリストとの会話をする機会があったのですが、「男性のファッションの方が残念な人が多い」という話が結構出てきたんです。友人や家族、彼氏だけでなく普段、町中を歩いているときにも「何であのパンツを履いているんだろう」といった人をよく見かけるという声がありました。「女性が男性のコーディネートをしてあげるようなサービスがあってもいいよね」ということを雑談的に話していました。

当時、運営していたサービスも、今後さらにスケールする必要があるという状況で、一旦サービスを見直そうということになりました。そのときに、女性からの声のあった男性のコーディネートを女性が見直してあげる、というサービスが企画にあがってきたんです。

我々がやりたいのは、“得意な人と不得意な人を結びつける”というコンセプトでした。そこに付加価値が多いというのが前提としてありました。

男性の場合、ファッションに気を遣う動機として「モテたい」という理由があると考えています。そういった理由に照らし合わせたときにコーディネートができる女性が適任なんです。男性のニーズに応えられるファッションの専門家がいるというのが理想的でした。

ファッションが苦手な人をイメージして、そういう方を救うサービスを作りたいな、というのが発端です。

 

ーまだサブスクが一般的でなかった2016年に、販売という形態からサブスクリプションに切り替えたのはなぜでしょうか

私達としてはシンプルに1つの理由で、提供するサービスの付加価値をどれだけ増やせるか?だと考えています。これからシェアリングが流行るとか、サブスクが流行るとかといったビジネス的な文脈を第一に考えるのではなくて、ファッションが苦手な男性に、ファッションを販売するほうがいいのか、レンタルするほうがいいのか、どちらの方がよりよいかということを考えました。

そのときに、買うのが適切ではないという判断をしました。買ってしまうとそればかり使ってしまうといったことも起こりうるからです。また、買い取りだとこれから行く場所などに合わせたファッションをする、という部分と相反する部分があるじゃないですか。

販売だとあまり問題解決にならないんじゃないかと考えました。

 

小売とサブスクリプションの違いはユーザーの情報量

ーleeapを始める前と始めた後のユーザー想定の違いはありましたか?

もともと、30歳前後のターゲットを切ってスタートしたんですね。ただ、レンタルファッションのマーケットそのものが無い時代でしたし、スタート当初はえいやで決めたような感じでした。ファッションレンタルというサービス内容から、恐らく若い人たちが使うのではないかと予想していたのですが、サービスを開始してみると35歳~40歳の方が主に申し込みをしてきました。想定と違ったので、結構びっくりしました。

ファッションのサブスクリプションは仕入れが先行するので、ざっくりであっても年齢層やターゲットを絞っておく必要があるんです。現在でも、それは調整しながらやっています。

 

ー小売からレンタルという形態に切り替えて、新しい発見などはありましたか?

本質的に違うな、と感じているのが、ユーザー一人に対する情報量が違うと思っています。leeapのサービスでは、会員登録をしてもらってからLINEを使ってコミュニケーションをしています。小売をしているときには、買ってくれたユーザーがどんな人で、どこに住んでいて、どんなニーズを持っているのか?といったことはあまりわからなかったんです。何故か分からないけどこの商品はよく売れるな、という状態。

サブスクリプション型にしてから毎月接点があって、何回もレンタルしてもらっているので、LINEというオンラインのつながりではあるのですが、チャットで画像のやり取りなどをしていると、奥さんがいてお子さんもいらっしゃるんだな、とかユーザーの生活背景がわかるんです。そうなってくると、小売のECで会員1,000人というのと、サブスクリプションサービスで会員1,000人では、持っている情報量が全然違うんだなということが分かりました。

ユーザーがどう思って使っているのか、どう感じているのかといった情報は、サービス改善の源泉になってくるので、そこが小売とは格段に違うなと感じているところですね。

 

leeapの継続率を上げるための取り組み、そして離脱の理由とは

ーサブスクリプションというと、継続的な接点づくりが重要視されていますね

そうですね、leeapでいうとLINEでのコミュニケーションが主軸になっています。

 

ー継続率を上げる取り組みはされていますか?

私達の場合、コーディネートを提案しているという事もありますので、最適なコーディネートを提案出来ているか、というのもありますし、さらに分解していくと一つ一つのアイテムの満足度もきちんと担保出来ているかも重要です。配送についてもきちんとお客様に満足いただけているかが継続率と関連していると考えています。

また、料金プランについても同じくです。ユーザーが解約してしまうきっかけになってしまっていないのか、全セクションがユーザーの継続について考えています。

 

ースタイリストがコーディネートするファッションのサブスクリプションの場合、ユーザーの好みとのマッチングが重要とよく耳にしますが、leeapさんで工夫している点はありますか?

LINEを使ったコミュニケーションを大事にしています。初回のコーディネートはもちろんですが、複数回使っているユーザーさんとのコミュニケーションも非常に重要です。会話を通して好みをすり合わせるところが強みだと考えています。対話内容については、常にブラッシュアップしています。

 

ー継続率はどのくらいでしょうか

サービスが3年経っていないくらいのサービスなので、継続率についてまだ正確な数値は語れないと思っているのですが、衣食住の衣の部分なので、長く使ってもらえるサービスだと考えていますし、実際に長く使って頂いています。

逆に言うと、早めに解約してしまうユーザーも一定層いらっしゃいます。ファッションレンタルサービスというのは、どう使えば自分の生活に馴染むのか?がまだ確立していない分野だと思っています。まだまだユーザーさん側でもどうやってファッションレンタルを生活の中に役立てていこうか試行錯誤にあるのではないでしょうか。

レンタカーを借りるときなどは、どんな時に借りたら便利なのか?といったことはそれなりに理解されていると思うんです。クルマは持っていないけど、みんなで旅行に行く時に一人3,000円出せばクルマが借りられるから便利だね、といった感じで。

ファッションレンタルサービスの場合、自分の生活に取り入れたらどんな風によかったのか、ということをみんなが語れるかというと、まだ語れる状態にないんです。そうなった時に、新規性のあるサービスなので違った価値を求めて入会してしまった、というユーザーさんは一定層いると思います。思っているサービスと違った、という理由でやめるユーザーさんはいらっしゃいますね。

 

ー思っているのと違ったというと具体的にはどういうことでしょうか

いつまでもあるのが、「好きなものが何でも借りられると思った」というのがあります。あのブランドの今シーズンのこのセーターを貸して欲しい、みたいな要望です。それは対応がさすがに難しいです。

私達としては、自分で服を選ばなくてもいい、という部分を価値にしているので、ピンポイントでブランド指定などがあると根本的にニーズが違うことになってしまいます。こうしたミスマッチの解消のためには、本来であれば会員登録前にお伝えしなければならないんです。早々に退会される方はほぼミスマッチです。

ある程度長く使ってやめられる方の場合は、ざっくり言うと、生活に合わなくなった、という理由が多いようです。どういうことかというと、引っ越しがきっかけになったり、結婚がきっかけになったり、仕事を変えたことによって服装が変わったりといった場面で退会があります。

先程触れましたが、LINEでユーザーさんとコミュニケーションをしているので、なぜユーザーさんが退会に至ったかまでが分かるようになっています。こうした情報が我々の財産だなと感じています。

 

価格はユーザーの期待する価値とのマッチングで妥当性が決まる

ー価格設定について、7,800円/月のカジュアルプランと、13,800円/月のジャケパンプランがありますが、当初どのように設計されたのでしょうか

まずは原価をベースにして、最低ラインを設計しました。アイテムの仕入れにどのくらいかかって、減価償却がどのくらいで、というのがまずはベースになっています。あとは、付加価値が価格に乗ってくるんですが、3年前には他に基準もないので、ある程度えいやで決めた部分はあります。今となっては明確にわかっていることなのですが。

 

ー価格の改定などは過去にされたのでしょうか

プランを設計して出したときから変更はしていないですね。ただ、サービスの内容、具体的にはレンタルする服の数量などは調整をしています。

提供価格が最適か?ということは常に考えていて、変更したほうがいいとなれば変更していきたいと考えています。

 

ー逆を言うとユーザーから価格に対する不満は大きくないということでしょうか

大きくないか、というと価格に対するご意見はあります。先程の話に戻ってしまうのですが、私達の提供している価値が関係していると考えています。

単純に服を買うか借りるか、という話になるとleeapは服を買うこととの比較になります。なので、よくあるのがユニクロで買ったら何が買えるとかそういった話になってくるのですが、そうなるとしんどい話でしかなくなってしまうんです。安くていいものが買えるという小売の発想です。

私達の場合、配送やクリーニングだけでなくLINEでの相談などをひっくるめてサービスとして提供しているんですが、服というものだけを比較したら高い、と感じる部分はあるようです。なので、服というモノにお金をはらうという感覚の方から見ると高い、と感じるようです。

一方で、仕事が忙しくて週末も家族とどう過ごそうかと考えているような方からすると、私達のサービスはとても便利で、むしろ安いといった評価をいただけています。

 

ファッションのサブスクリプションは広告と相性が悪い?

ー新規のユーザー獲得はどのようにされていますか?

限定された経路は特にありませんが、多いパターンとしては、最近になってサブスクリプションやシェアリングといったことが注目を集めています。メディアの特集などでファッションレンタルなどが取り上げられると、男性のファッションレンタルはまだ数が少ないので、検索して入会される方が多いです。

leeapはファッションが苦手な方をメインのターゲットにしているんですが、ファッションが得意でも時間のない方、つまり何らかの理由があって洋服を選んで欲しいという方もターゲットだと考えています。そういった方々に普通に広告を打ったとしてもなかなかうまくいかないんです。ファッションレンタルサービス、と言っても「そういうことは考えたくない」と、弾かれてしまうんですよ。「ファッションが好きな人のサービスでしょ」と。なので、あまりネットの広告との相性がよくないビジネスだと思います。

検索広告などで、明らかに私達のサービスを探しているような方とコンタクトをとるのは大丈夫なんですが、興味関心が向いていない方に対して広告を見せても行動を起こしてもらうには難しい部分があります。

なので、検索広告もそうなのですが、ニュース系のメディアに掲載されて、記事を読んだ方が入会しているという状況です。

服を自分で選ぶ時間がなく忙しい、自分では選びたくない、といった動機なので、そういったニーズをターゲットとした企業さんと組んでキャンペーンをやったりもしています。例えば所得の高い方などは仕事が忙しいこともあって自分で服を選ぶ時間がなかったりします。分かりやすい例で言うと、不動産業界でマンションの管理サービスと組んでleeapを紹介したりしています。

 

サブスクリプションのメリットは安定した売上からくるユーザーとの対話の創出

ー小売の業態からサブスクリプションに業態転換して見えてきたことはありますか?

ビジネス的に見ると、安定的な収益が見込めるようになったと言えます。毎月継続の課金が収益のベースになるという部分です。事業が安定する、ということから、じっくりと事業の本質と向き合いやすいというメリットが生まれます。サービスを改善する上で非常にやりやすい部分です。

小売をやっていたときには、月単位や週単位で売上が変わっていました。売上が上がったり下がったりして、そこに振り回されてしまうということがあると思います。売り上げが上がったので仕入れも増やさないといけなかったり、売上が下がったらシフトを組み直さないといけなかったり、モノも人も全てが振り回されていました。

売上が安定していると、日々の売上に振り回されることなく、例えばユーザーが退会するときに「こういう理由だ」など声に耳を傾けることができますし、「ならここを改善しよう」といったビジネスの改善にも非常に取り組みやすいです。

ビジネスサイドだけでなく、ユーザーサイドにとってもいい面があると思います。小売をやっていると、「めちゃくちゃ売れたけど、何でこれが売れたんだろう」ということがよくあります。そうなったときに、またヒット商品を作るときも曖昧な決断をしていたことが多かったんですが、サブスクリプションの形式になってから、ユーザーさんに関する濃い情報が入ってくるようになってきたので、目の前の売上に振り回されずにユーザーさんに対する改善に取り組むことが出来ています。おかげで「もっとよくなったね」と言われることもあります。この、ユーザーさんとのコミュニケーションのキャッチボールが、小売とサブスクリプションの違うところだなと感じています。

 

ー事業のブラッシュアップというと、例えばどんな部分を今後さらにブラッシュアップしていくのでしょうか

まだ3年ということもあり、いろいろと改善していきたい部分は多いのですが、例えばLINEでのユーザー対応も改善していきたいと考えています。また、コーディネートについても、今はサイズや趣味趣向などのデータを学習して精度を上げていますが、これもさらに精度を上げていく必要があると考えています。

仕入れの部分についても、データを使って改善できる部分があります。売れる、売れない、というのももちろんありますが、このブランドのこのセーターは廃棄するまでの期間が長い、といった情報も貴重なデータになってくるんです。こうしたデータを持っていると、「とりあえず3,000円のセーターを仕入れよう」ではなく「このセーターは5,000円だけどしっかりしていて長持ちするからこちらを選ぼう」といったことが可能になってきます。これは、小売には無い感覚だと思います。

 

ファッションのサブスクリプションは小売りと対立するものではない

ーそうしたデータはアパレルメーカーと共有したりするのでしょうか

そうですね、今後はしていきたいと考えています。ただ、最近になってやっと理解が得られ始めているのですが、アパレルメーカーさんの中には服のレンタルに対して賛成しているところもあれば、あまりよく思っていないところもあるのが現状です。

私達としては、アパレルメーカーの市場を食っていくぞというつもりはなく、お互いにいい形を作っていければいいと思っているんですが。

 

ーleeapの今後の展開は?

今ターゲットにしている、自分で服を選びたくない、クリーニングしたくないといった方へのサービス価値を高めていくという取り組みの中で、仕入れの最適化やコーディネートの最適化を進めていきます。

また、私達のサービスを喜んで使ってくださる方がいるのは体感値としてわかってきているので、サービスを知っていただき、使ってもらう。その経路を太くしていくような取り組みが必要だと思っています。先程もあった、企業とのコラボレーションなども積極的にやっていくつもりです。

仕入れの部分についても、メーカーさんと連携を強めていくつもりです。30年後に全ての人がファッションをレンタルしていないかというと、そんなことはないはずです。小売とレンタルはきちんと共存できると考えています。そういう意味で、アパレル業界を活性化できないかという観点でメーカーさんと取り組んでいきたいと考えています。

ーありがとうございました

参考:ファッションのサブスクリプション『leeap』 https://leeap.jp/

ニュースレター登録
杉山拓也
大手SIerを経て、ベンチャー企業にて複数のB2Bメディアを立ち上げる。 その後アプリマーケティング会社を立ち上げ、500以上のアプリマーケティングを支援。サブスクリプション型のビジネスを通して継続的にユーザーとコミュニケーションする重要性を体感する。 サブスクリプションマガジン編集長。