ー少し話題はそれてしまいますが、大藪さんは創業前はFiNCさんでエンジニアだったんですよね
そうですね。起業そのものは、高校生のときに志していたので、大学に入ってからは成功確率をどう高めていくか?をひたすら考えていました。そんな中でインターンをしたのが、クラシルを運営するdelyと、FiNCだったんです。
airRoomのサービスローンチ前には、自分でモックを作って、澁谷のスクランブル交差点で人に声をかけて「このサービスどうですか?」というのをヒアリングし続けていました。ヒアリングして、ダメだとなれば、カフェに入ってまたモックを作って、ということを繰り返していましたね。
ーそれはサービスローンチに向けたテストも兼ねていたんでしょうか
はい、最初のうちはターゲットもどこに刺さるかわからなかったので、無作為にヒアリングをしていました。
僕らは、2つの仮説検証をしていました。1つは簡単なLPを作って広告を打つこと。事前申し込み受付という形でFacebook広告を実施していました。もう1つがスクランブル交差点でのヒアリングです。これで、定量的・定性的両面で分析ができました。
広告に関して言うと、Facebook広告での事前申し込みまでのCPAが200円から300円でとれていました。なので、一定のニーズはあるだろうと。一方で、LPでの事前申し込みだけだとどんな家具が借りたいのか?まではわからなかった。なので、ユーザーヒアリングという形で細かいニュアンスを聞き出していました。
検証は3ヶ月間、徹底して行っていました。
ー家具のサブスクリプション各社で流通のスキームは違うのですが、airRoomさんはどういった仕組みをとっているのでしょうか
家具の仕入れは企業と提携しています。彼らの持っている遊休在庫を活用する仕組みをとっています。そのため、仕入れコストを低い状態に保っています。
ただ、この方式を永久的にとっていくわけではなく、いくつかのステップを踏むと考えています。先程の、最終的にはシェアリングを促進するというのもそうですし、今の市場環境のなかで家具は縮小しつつあるので、それを解決したいという思いもあります。
企業さんにとっても一定のメリットがあって、マーケティングをして認知度を上げていく。そのために在庫を活用させてください、というのがファーストステップ。次に、家具を仕入れてデータを蓄積していくのがセカンドステップ。サードステップとしては、オリジナルの家具を製造していくことを考えています。
ー仕入れの取引先の開拓はどうやっておこないましたか?
創業前に資金調達も含めていろいろな方とお会いしていたのですが、家具ECの大手さんからのご紹介などで開拓ができました。
ー家具ECとは競合サービスにはならないでしょうか
はい、家具のECとは明確にターゲットが違うんです。彼らは、家具を購入したい高所得層を狙っています。ソファが10万円とか20万円とか、価格はあまり関係なく、誰が作ったものなのか?などそういったところにこだわりを持つ層です。そういったところがairRoomとはターゲットが違うんです。
ー家具の問題や世代特有の特性を考えたときに、なぜサブスクリプションという形態をとったのでしょうか
ユーザーヒアリングをしていたときに、家具を1年縛りにしても1日で返してもらってもどちらでもいいと考えていました。ユーザーの目線にたったときに、必要なときに、必要なものを必要な期間だけ使えればいいわけですから。その価値を提供することで得られるのがコアバリューだと考えています。
そのときに、どこでお金を発生させるかというのをヒアリングしたり、ディスカッションするなかで、家賃と同じように毎月1回発生させるのが、ストレスが一番ないのではないか?という着地になりました。その結果がたまたま、サブスクリプションという形態でした。
ーサービス設計の際に最も課題になるのが価格設定(プライシング)だと思いますが、どのような考え方で設計したのでしょうか
確かに、プライシングは考えますね。大きく2つあって、1つは経済合理性です。どの家具サブスクリプションもそうだと思うんですが、買ったほうがお得なのか、借りた方がお得なのかというユーザー心理は常にあります。
僕らの想定しているペルソナ像では、賃貸契約の更新料がかかるタイミングで引っ越される方なんですね。引っ越しのタイミングで家具を一式揃えようとすると、大体15万円くらいかかります。でも、airRoomで家具を一式揃えてレンタルすると、12万円で済むんです。
家具一式購入するよりお得な設計になればいいので、あとは家具の原価や償却期間などを考慮して割り出したのが1つ目です。