日本最古のサブスク?「富山の置き薬」

また、どの薬がいくつ売れたのか?も把握できることから、在庫管理や次回の予測も可能でした。
販売管理データベースでもあったということです。

顧客情報や取引情報、過去のやり取りなどが記載され、代々引き継がれた懸場帳はそれ自体に大きな価値を持つようになり、高額で取引されたようです。

 

「富山の置き薬」に見る継続顧客特典

富山の置き薬には継続顧客特典までありました。
薬売りは、薬とともに浮世絵や紙風船といったおまけを持って歩いたと言われています。
得意客におまけを渡すことで、顧客とのコミュニケーションをはかっていたのです。

“富山の売薬の1つの特長としておまけ(おみやげ)を渡すことがあげられるが、江戸時代後期から行われているおまけで人気があったのが、富山絵(錦絵)と呼ばれた売薬版画(浮世絵)で、歌舞伎役者絵、名所絵(風景画)、福絵などいろいろな種類が擦られ全国の家庭に配られた。そのほか紙風船をはじめ、「食べ合わせ」の表や当時の歌舞伎の情報や、紫雲英の種など軽いものを中心に日本中に配った。また上得意には、輪島塗や若狭塗の塗箸、九谷焼の盃や湯飲みなどをおみやげとして渡していた。”
出典:ウィキペディア「富山の売薬」

上得意には塗箸や湯飲みなどを渡していたということで、ロイヤル顧客向けの特別プレゼントが用意されていたようです。

「食べ合わせ」の表などは、現代でも「化粧品の効果的な使い方」や「革製カバンの上手なお手入れ」といった顧客の利用促進ツールに使われていますね。
富山の置き薬は江戸時代からこうしたおまけ、という手法で顧客へ継続特典を用意していたのです。

 

まとめ 現代のサブスクリプションでも活用できる富山の置き薬のノウハウ

富山の置き薬のポイントとして3つを取り上げさせていただきました。

1.先に利用してもらって利益は後から求める「先用後利」の精神
2.顧客情報を事細かに記してコミュニケーションを円滑化させるデータベース「懸場帳」
3.継続顧客へのロイヤリティを作り出すための「おまけ」

先用後利については無料期間の設定や、お試しサンプルの申し込みなど、まず試してもらって効果や使用感を実感できた後にサブスクリプション契約を結ぶ取り組みに当てはまります。
懸場帳は顧客の基本情報や直近の行動履歴、商品在庫の管理や売上予測などを行うデータベースの起源です。
おまけは継続特典として現代のサブスクリプションにも活用されている手法です。

薬箱を置くことで、継続的に薬を販売して顧客との関係を深めていく富山の薬売り、現代のサブスクリプションでも学ぶことが多そうです。

富山の薬売りについては、ウィキペディアのほか、一般社団法人 全国配置薬協会のサイトでもその歴史が詳しく書かれています。
よかったら参考にしてみてください。

参考
ウィキペディア「富山の売薬」:https://ja.wikipedia.org/wiki/富山の売薬
一般社団法人 全国配置薬協会「おきぐすりの歴史」:http://www.zenhaikyo.com/history/

サブスクマガジン 編集部
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