第二ステップとしては、テストマーケティングです。第一ステップで作ったサービスを実際に試して検証する必要があります。ここで、システムを作ったり、インフラを整えたりと投資に走る方が非常に多いのですが、ここは最小限の投資や手作業などで行うことをおすすめしています。何故なら、企画したサブスクリプションビジネスがうまくいくかどうか、この時点ではまだわからないからです。スピード感も失われてしまいます。
営業資料や提案資料といったセールスのツールを作るのもこの段階です。作ったサービスの提案資料を使って、営業活動をおこなうことで、実際にニーズがあるのかどうか探るとともに、受けた発注からテストランを行う。実際にやってみて、今の戦略でいけるのかどうかを判断することができます。
第三ステップでようやく、サブスクサービスの正式なローンチの準備に入っていきます。第二ステップでブラッシュアップしたサービスをもとに、システムの作り込みや、営業資料の作り込みを行います。ここでも大切なのは、最低限の作り込みに留めておくことです。このステップから初めて、プレスリリースなどを行っていきます。今は比較的サブスクリプションビジネスのプレスリリースに注目が集まりやすいので、早くプレスリリースを出したい気持ちはわかりますが、サービスが整っていない第二ステップの段階でだしてしまうと、うまくいくかどうかも分からない状態なので、あくまで第三ステップで本格運用が始まってから告知や営業活動をすることをおすすめしたいです。
−第二ステップでサービスをブラッシュアップして、第三ステップで告知や営業活動を本格化するということですね。
たとえばレストランなどを例として挙げるとすると、第一ステップと第二ステップまでは1店舗目です。そこでいろいろな検証をして、上手く行ったら第三ステップとして次の店舗を出していく。その後、店舗展開をしていくイメージです。小さくはじめて検証してからサービスをローンチしていくのが重要です。
第三ステップで運用が開始されたところで、第四ステップに入ります。第四ステップは徹底的な顧客との対話です。サブスクリプションというのは、買ってもらったら終わりではなく、契約してからがスタートです。サブスクのポイントは、どれだけ満足して長く使っていただけるかです。実際にお客様に使っていただいて、どんな部分がよかったか、改善事項はないか、解約した場合にはどうして解約になってしまったかなどをコミュニケーションで理解していきます。
こうした対話はサービスが続く限りやり続けないといけないことです。第四ステップまできたら平均して何回くらい顧客が利用してくれているのかであったり、顧客獲得コストがいくらくらいかかっているのか、利益率がどの程度なのかといった情報も獲得できるようになってきます。こうした数字をもってサービスをブラッシュアップしていくのが第四ステップになります。
その後にはサブスクの一つのゴールである黒字化が待っています。サブスクというのは一度黒字化してしまえばその後続いて黒字化します。損益分岐を超えるというのは一つのサブスクのゴールと捉えることができますが、データがなければいつ損益分岐を超えるのかもわからないので、データから逆算して、サービスをブラッシュアップして新規顧客を獲得しつつ継続率を上げていく必要があります。
−こうしたステップをきちんと踏んで、損益分岐を迎えるということなのですね
はい、しかし多くのサブスクリプションビジネスは、いきなり第三ステップから始めていたりするんです。最初から本番サービスから初めて、大規模投資をしてしまう。しかも広くサービスを提供してしまっているので、ダメージも大きい。お客様に喜ばれないようであれば、いくら投資をしたとしても第一ステップからやり直す必要がある。
いま、いくつかのお客様の相談に乗っていますが、第三ステップに到達するまでには、三ヶ月から六ヶ月はかかります。きちんとしたサブスクサービスとして設計してローンチするためには半年近くは必要なので、今は目先のコロナによる不況で手一杯かもしれませんが、さらに先のコロナウイルスが落ち着いた時期を見越して、足元のビジネスを立て直しながら次の事業の柱を作り上げて行く必要があると考えます。
−今の状況だけにとらわれず、次の手を考えていく必要がありそうですね。
はい、そのとおりです。今の売り切り型ビジネスと並行して、サブスクリプションビジネスを設計していく必要があると考えています。こういった社会情勢の変化というのは常にあるものとして、想定しておく必要があります。今回の事態から学ぶチャンスであると考えています。
−最後に、このコロナウイルスに端を発した今回の社会情勢の中で伝えたいことはありますか。
これは私の過去の経験談になるのですが、かつてのリーマンショックの際に今回と同じように経営で地獄を見てきました。そんな中でサブスクリプションビジネスに転換して今東証一部に上場したという経緯があります。ピンチはチャンスではないのですが、今の時期だからこそ、半年後、一年後を見据えて地道に次の事業の設計を行うことで、「あのときやっておいてよかった」と思えるのだと思います。そういう意味で、今回の緊急事態宣言についても大きなきっかけにして欲しいと思います。
−ありがとうございました。